ロリポップ
「僕は逢沢さんが好きです」


「え・・・?」


 聞き間違いじゃない?
 今、好きって言った?

 思わず聞き返す私を笑いながら見つめる恩田君の顔は、少しだけ赤い気がした。
 さっき、お酒飲んだからとかじゃなくて?
 

「お酒飲んだからじゃないですよ?時々、心の声が駄々漏れですよ、逢沢さん」


 ククッと笑いながら、恩田君は肩を揺らす。

 ハッと口を押さえるけれど、時すでに遅し・・・・・。


「正直にいいますね。城嶋さんに逢沢さんを紹介して欲しいって頼んだんです、初めて飲んだ日に」


 衝撃的な告白には続きがあったなんて・・・。
 告白のダブルパンチで、私はぽかんとしてしまう。

 瑛太がたまたま連れて来た訳じゃなかったの?


「あの日、城嶋さんと取引先に行っていたのは本当です。失恋したって言うのは行ってから知りましたけど。城嶋さんも行くまでそんな事、全く言わなかったし。会うチャンスをやるから後は自分で何とかしろって言われましたけどね」


「そんな話、一言も瑛太は言わなかったけど・・・」


「言わないと思いますよ、城嶋さん。逢沢さんの事、凄く大切な友達だからって言ってましたから。だから、酔って僕の部屋に泊まったって知った時は呼び出されました。出先に居るのに、今からすぐ来いって。むちゃくちゃなんですよ、城嶋さん」


 笑いながら恩田君はまっすぐに私を見つめる。

 瑛太がそんなに思っていてくれていたなんて、全然知らなかった。

 大切な友達だと私だって思っている。

 思ってるけど、仕事中で出先の恩田君を呼び出すって・・・・・。


「・・・なんか、ごめん・・・」


 瑛太に代わって謝ります・・・本当、子供みたいですみません・・・。


「なんで逢沢さんが謝るんですか~、怒るのは大切だからですから、当然です。本気じゃないなら二度と会うなって言われました。当然、本気ですっていいましたけど。本気じゃないなら、部屋まで連れてかえりませんよ」

 
 さらりと告げられる真実と告白。
 
 心臓はもう限界!!と叫んでいるかのように、最速記録を更新中。


「・・・全然そんな素振りなかった・・・」


 拗ねるように言うと


「・・・気づいてないの、多分、逢沢さんだけですよ?」

 
 溜息と共にやっぱりね・・・と聞こえた恩田君の呟き。
 
 え・・・?そうなの?

 気づいてないの、私だけ???



 
< 60 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop