ロリポップ
「え・・・でも、友華は・・・」


「戸田さんですか?昨日、いい加減に告白しろって脅迫状みたいなメールが来ましたよ、面白いですよね、戸田さん」


 果たし状から脅迫状にグレードアップ?したメールを面白いと言える恩田君は、大物かもしれない・・・。

 友華はいつから気づいていたんだろう?
 
 私の気持ちの変化には気づいていた様子だったけれど、恩田君の事は何も言ってなかった。

 お正月の悩んだ彼女の存在の時は、気が付いてない感じだったけど・・・。

 瑛太から聞いたのかもしれない。知ってても、簡単に言う訳ないか・・・・。


「僕はいつになったら逢沢さんが言ってくれるかなって思ってたんですけど・・・。結局、待ちきれずにフライングしちゃいました」


 笑いながら立ち上がった恩田君は、お茶入れますね、とキッチンに向かう。




 彼女が居ると悶々と悩んだ数日間は、本当に最悪だった。

 仕事が始まっても全然会えなくて、やっと見かけた姿は後姿。

 顔が見たかったのに!とその後姿に咆えそうだった。

 気が付けば、文哉の事なんてどうでもいいって思えてた。

 朝のロビーで、エレベーターの前でその姿を探して、休憩室でコーヒーを買う人を思わず振り返って、食堂のカフェオレを飲みながら考えて、帰りの植え込みの影を覗いてしまう・・・・・。

 乙女チック症候群だって言われても構わない。

 私は恩田君が、この人が好きなんだ。



 そう思ったら、体が勝手に動き出す。

 今、私が一番したい事――――――。




 キッチンに紅茶を探して背中を向ける恩田君は、私が近づいている事に全く気が付いてない。


 びっくりするだろうなって思いながら、抱きつくのを止められなかった。


 全然止める気もなかったけど。



「え?どうしたんですか!?」


 後ろから抱きつかれた恩田君は、予想通り、かなりビックリしている。

 片手にはティカップ、片手には紅茶の缶を持ったまま、抱きついた私を振り返る。

 
「恩田君・・・」


「はい?」


「お願いがあるんだけど?」


「え?」


「キスしても・・・いい?」



 
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