シークレット・ガーデン
2人で打ち解ける夜


真彩がリビングに戻ると、ひと気はなくて、常夜灯だけが灯っていた。


(えっ…
司ってば、もう渚と寝ちゃったんだ……)


てっきり司は起きていて、これから2人でビール片手に向かい合い、世間話でもするつもりだった真彩は、拍子抜けしてしまった。


食卓テーブルの上には、司の飲んでいた缶ビールがそのまま置いてあった。


空だと思ったのに、真彩が手に取ると、まだ中身は半分くらい残っていた。



ーーせっかくなのに、飲まないで寝ちゃう気なんだ……


突然押しかけてしまったけれど、司はとても疲れていたのかもしれない。


寝室の襖をそっと開けると、電気スタンドの灯りが灯る中、司はまだ起きていた。

自分の布団の上でうつ伏せになり、真彩の方に顔を向ける。


「司、お風呂、ありがとう」


真彩が声を掛けると、司はゆっくりと身体を起こし、布団の上に胡座をかいた。


「こっちこそ、ありがとう。
真彩があんなにピアノが上手いなんて知らなかったよ。見直したな」


司は、真彩を見上げるようにして言った。


「付き合ってた時は、ピアノなんて弾く機会なかったもんね」


「……ところで、旦那さんからは、メールあったの?」


暗がりの部屋で、陰影のついた司の顔は、少し痩せたように見えた。




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