シークレット・ガーデン
「…へえ…そうなんですか」
相槌を打ちながら、真彩の鼓動は早くなる。
隣にいる優美子のことなど忘れてしまうほど、確かめたくなってしまう。
「いい跡継ぎさんがいらっしゃって、良かったですね?」
「はあ。うちには子供がいなかったんでね。せっかく砂川フルーツパークここまで大きくしたの私の代で終わりかって、夜も寝れなかったですよ。
甥っ子が継いでくれることになって、妻と手を取り合って喜びました」
おじさんは陽気に笑った。
「真彩……」
優美子も気付いていた。真彩の腕を軽く肘でつつく。
真彩は小さく頷いた。
「良かったら、うちの自慢の蘭が展示してあるんで、見て行って下さい」
後から入ってきた客の為に、おじさんはそう言った後、真彩達から離れていった。
真彩と優美子は、白いクロスの掛けられた奥のひな壇へと進んだ。
真彩の足は、まるで磁石みたいに一つの小振りな白いカトレアの鉢に吸い寄せられる。
純白の花びらのふちがほんのり桜色に染まる優美な『姫』に呼ばれるかのように…….