先天性マイノリティ
狭い屋上、小さな世界。
俺たちの関係は閉塞的空間の中にぽっかりと空いたちっぽけな自由から始まった。
都内の雑踏から少し離れた場所にある偏差値が高いわけでもない、冴えない高等学校。
それが俺たちの出逢いの場所。
放課後、間延びしたチャイムの音を聴きながら階段を昇る。
ぶら下がるハイルナキケンの文字をかわして扉を開けると二つの人影を発見。
「よお」
「好きだねえ、あんたも」
二人が醸す独特な空気感は好ましい。
亀裂の入ったアスファルトの上に胡座をかいて座る。
コウとメイと俺の三人が知り合ったのは二週間ほど前のことだ。
偶々屋上の鍵が壊れていて、好奇心から立ち入り禁止の掛札をくぐったのが始まり。
単独行動を好む三人が揃ったときの奇妙な一体感は言葉には著せない。
知り合って二週間剰りとは思えないほど打ち解けている心情も。
「あいつら、よく律儀に頑張れるよな。将来サッカー選手になれる訳でもないのに」
コウが気怠そうに背伸びをしながらフェンス越しに豆粒サイズの人影が走る校庭を覗き込む。
呆れたようにメイが溜め息を吐いた。
「夢がなさ過ぎ。なりたいもの、ないの?あんた三年のくせに進路どうする気?」
「まだ考えたくない。無駄な努力しても仕方ねえし。俺、人生適当に生きてるから」
「はー…あんたらしいけど、一応年上なんだからしっかりしてよ」
「一学年だけだろ。寧ろメイのほうがしっかりしてる」
そう言いながら龍の模様のジッポを取り出し煙草に火を点ける。日々隠れて吸いながら、証拠隠滅の為の携帯灰皿とミニサイズの脱臭スプレーをポケットに忍ばせている。