先天性マイノリティ
高校時代、コウとメイに出逢って間もなく「クラムボンについての考察」という散文詩で賞を貰ったことがある。
宮沢賢治が好きな俺と、太宰治が好きなコウ。
殆ど漫画しか読まないメイが唯一好きな文庫本は有名な「星の王子さま」。
好きな作品、好きな作家はその人物の根底の嗜好を克明に顕すと思う。
俺は、ふわふわとした、不思議な物語が好きなのだ。
だから宮沢賢治の世界を愛するように、コウを愛した。
詩の内容を二人に見せたとき、絶賛してくれた覚えがある。
今の俺の心象は、あの文章に似ていると思う。
細かい部分は忘れたけれど、クラムボンはわからないからいい、これからも掴めない存在であって欲しい、でも本当は暴きたくて仕方がない、というようなものだったと記憶している。
…正体不明のクラムボンは、まるで、コウそのものだ。
『コップは夢を見ると思う?』
懐かしい声が反響して、ぱちん、と目の前ではねた。