美術部ってさ!
「う〜ん…つまり、好きだな〜っていう気持ちが、絵を描く上では大事なんですけど…今回はモチーフが選べないので…せめて敬意を持って描くと、結構変わりますよ…」

「へ〜そうなんだ…サンキュー、やってみるわ」

「…何かあったら、後ろにいるので、声をかけて下さい…」

冬馬は椿の没頭した様子を見ると、自分の作品を仕上げるべく、パーテーションで仕切られた空間に戻って行った。


しばらく二人しかいない美術室からは、椿が走らせるエンピツの音と、冬馬の動かすぺインティングナイフの音だけが、小さく響いていた…

それはカリカリと静かな、断続的な音で…冬馬は作品に向かいながら、ふと、この部屋が一体感に包まれる錯覚を覚えた…

それぞれ違う事をしているのに、不思議と心地のいい一体感が生まれる瞬間があると、冬馬は時々思う事があった。



「…そうだ冬馬、聞いていいか?」

「はい…何ですか?」

椿はデッサンに集中したまま、冬馬に話しかけた。
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