パツ子と甘えん坊くん。
授業終了のチャイムが鳴る。
あたしは教科書を鞄にしまいながら、今朝の恥ずかしい出来事を思い出す。
あれから朝練が終わるまで、まともに真琴のプレーを見ずに下を向いていた。
女子生徒達は真琴を見る人にあたしを見る人にと、それぞれ半々くらいいた。
全く、公衆の面前で甘えてくる真琴のせいだ。
あたしのあだ名も一年に余計に広まったし、あの女子生徒のせいで。
あの女子生徒は真琴目当てで来てたんだから、どっちにしろ真琴のせいだ。
とヒトに罪を押し付ける。
ま、まぁ、甘えられたのは嬉しかったけどね!
「あれ、朝から既に約10時間経ってるのにまだ怒ってるの?」
前の席の菜緒があたしの顔を覗き込む。
あたしの頬は自然と膨らんでいたみたいだ。
「だいたい、菜緒が大胆にからかったせいでこうなったんだからね!」
更に大きく頬を膨らませてみせる。
菜緒はそれは悪うござんしたと言いつつも、あたしの膨らんだ頬を潰した。
すると菜緒が教室の入り口を見てあ!と言った。
そしてニヤリと笑ってリュックを背負った。
「小夏のバ彼氏来たよ!じゃあまた明日ね!」
あたしの肩をポンと叩いて教室を出て行く菜緒を見ずに、あたしは窓の外を見る。
そこに真琴がゆっくりとやってきた。