*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
青年が目を剥いて身を起こし、六の君を凝視した。




その反応に気をよくした六の君は、にこにこと微笑みかける。







「よし! そうと決まったら………」






「……………や」







青年が何か言いたそうにしたが、六の君は意にも介さない。







「私、さっそく準備をしてくるわね。



まず、お湯を沸かして………。


髪梳きをするから、泔(ゆする)も用意しなきゃいけないし、道具も要るわね。



ああ、時間がかかりそうよ。


蘇芳丸、しばらく待っててね。



あ、おりこうさんに寝てなきゃだめよ?」








そう言って、六の君は人差し指を立てる。




次の瞬間にはすくりと立ち上がり、止める間もなく塗籠を出て行ってしまった。





ぽつんと取り残された青年は、呆然とした表情でその後ろ姿を見送るしかなかった。






< 71 / 650 >

この作品をシェア

pagetop