*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
六の君は青年の胴に巻かれた包帯を手際よく解いていく。




毎日朝晩、巻いたり解いたりしているので、手慣れたものである。







「よし、じゃあ拭いていくわね。


じっとしてなきゃだめよぉ、蘇芳丸」






「…………」







青年は険しい表情で、大人しく背中を拭かれる。





静まり返った塗籠の中、角盥の湯に布を浸して絞る音と、六の君の鼻歌だけが響いていた。







「ふふふ。気持ちいい? 蘇芳丸」





「…………」






「あらまぁ、気持ちよくないの?」






「…………」






「じゃあ、もっと力を入れたほうがいいのかしら?」






「…………っ」








六の君がこれ見よがしにごしごしと擦りはじめたので、青年はぎろりと睨みつけた。






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