*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
六の君は御簾をくぐって顔を覗かせ、外を確認した。
誰もいないことを見てとると、塗籠の妻戸の前で待つ青年に合図をする。
青年は不機嫌そうに溜め息をつき、気怠げな動作で六の君の手招きに応えた。
六の君は、無理やり青年の手を引きながら、母屋から廂、孫廂へと降りていき、簀子縁まで出る。
青年は、久々の外の空気を大きく吸い込んだ。
心地よさそうに伸びをする姿を、六の君は微笑ましく見つめている。
「気持ちの好い風ねぇ、蘇芳丸」
「…………」
「春の薫りがするわねぇ」
「…………」
「もうそろそろ、桜も咲いているでしょうねぇ。
見に行きたいわねぇ」
「…………」
青年の無愛想な態度に屈することなく、六の君は柔らかな春風に快さげに髪をなびかせていた。
誰もいないことを見てとると、塗籠の妻戸の前で待つ青年に合図をする。
青年は不機嫌そうに溜め息をつき、気怠げな動作で六の君の手招きに応えた。
六の君は、無理やり青年の手を引きながら、母屋から廂、孫廂へと降りていき、簀子縁まで出る。
青年は、久々の外の空気を大きく吸い込んだ。
心地よさそうに伸びをする姿を、六の君は微笑ましく見つめている。
「気持ちの好い風ねぇ、蘇芳丸」
「…………」
「春の薫りがするわねぇ」
「…………」
「もうそろそろ、桜も咲いているでしょうねぇ。
見に行きたいわねぇ」
「…………」
青年の無愛想な態度に屈することなく、六の君は柔らかな春風に快さげに髪をなびかせていた。