*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
簀子の縁に円座を置き、青年を座らせる。






「さぁ、髪を梳くわよ。


泔(ゆする)が垂れてはいけないから、上は脱いでちょうだいね」






「…………」







青年はやはり答えなかったが、黙って従う。







「ずいぶんぼさぼさだから、やり甲斐があるわねぇ」






「…………」







六の君は泔坏を傍らに置き、打乱筥の蓋を開けると、櫛を取り出した。




その櫛を泔坏の中の米の研ぎ汁に浸し、青年の背後で膝立ちになる。





無造作に背に流れている緋色の髪を手にとった。





それを陽に透かすように持ち上げてみる。



陽の光を受けると、その髪は薄紅梅色に明るく透けた。





六の君はその煌めきを見つめながら、知らず知らずのうちに嘆息し、小さく呟く。






「………きれいな髪ねぇ……」






「…………」






「まるで燈台の灯かりのよう………」







青年はゆっくりと顔を上げ、六の君を見上げた。






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