*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
柔らかく微笑んだその瞳は、昼の明るさに青みを増して、薄い浅葱色に輝いていた。






「……………」






「どうしたの? 蘇芳丸」






「……………」







六の君を見つめたまま動きを止めた青年に、不思議そうに首を傾げて問いかけるが、いつものように返答はなかった。




六の君は肩を竦めて、泔に浸した櫛を取り上げ、青年の髪を梳きはじめた。




緩く波うつ髪は、絹糸のように細い。



そのため、かなり絡まっているかと思っていたのだが、一本一本がしなやかで指通りがよく、思いのほか櫛が通りやすかった。



櫛けずるうちに艶も出てきた。




ときどき毛先から落ちて青年の肩や背に伝う泔の雫を、六の君は自らの袖で拭いてやる。



そのたびに青年は、居心地が悪そうに身じろぎをした。







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