黒鴉-黒の王-
「嘉六さん、芙蓉さん・・・。お話があります」
今度は私が座りなおした。
「どうしたんじゃ?」
「帝様のところに・・・・連れてってはくれませんか?」
「み、帝様のところじゃと?」
二人は目を見開いて驚いた後にうーんと声をあげた。
それから少したって嘉六さんは立ち上がると障子の戸を開けて外の遠くのほうをぼんやりと見つめていた。
時間だけがただゆっくりと流れていく。もう覚悟なんて昔に決めた。
沈黙を破ったのは嘉六さんだった。
「帝様のところは・・・
いくら妖怪のワシらにも想像がつかぬような場所じゃ・・・。
命の保証などできぬ。
それにここからでも元いた世界に戻る手立てはいくらでもある。
それでも本当に摩耶ちゃんは行きたいのか・・・?」
その後ろ姿は私に何を訴えているのだろう。
「はい。
私はここに来た理由が知りたいです。正直怖いです。
でもきっと私、今ここにいなかったらどうなっていたかなんてわからないんです。
もしかしたら死んでいたと思います。
だったらどうなっても真相を知りたいんです。お願いします!」