危険BOY'Sにキスをして。
あたしが通っている この学校の体育祭は、
『3年生がフォークダンスを踊る』という伝統的出し物がある。
「ヨウの衣装…」
その出し物用の衣装を、破られた。
「何で…どうして!?」
「どうして、って?」
「どうして、ヨウの衣装を…」
震える声で あたしは言った。
優子に対する…
怒り。
悲しみ。
堪えようとした。
でも。
無理だった。
「貴女が、ウザいから。」
理由は、あたし?
「あたしが ウザいなら…
あたしの制服なり、あたしの服を破ったら良かったじゃない!
何で…? 何でヨウの衣装を…っ」
「『ヨウ』『ヨウ』五月蝿いわよ。
『カナメ』って呼んであげたら?」
「要」と書いて 「カナメ」と読む。
でも、あたしは…
「ヨウ」って呼んでる。
だから、何?
「何でアンタにそんな事、言われなきゃいけな いのよ!?」
「好きな人なんでしょう?」
「は…!?」
好きな、人…?
ヨウが あたしの好きな人?
「知ってるのよ?
黒峰くんが、貴女にキスしたの。」
「だから…?」
「惚れちゃったんでしょう?」
あたしが、ヨウに惚れる?
馬鹿みたい。
さっき、ヨウと話したばかりだもの。
…それに。
「アンタは、何が言いたいワケ?」
「私が言いたいこと? それは、ね…」
一瞬 静かになり、あたしは唾を飲み込む。
「キスされただけで惚れちゃう…
可哀想な女の子、って言いたいのよ。」
可哀想?
この、あたしが?
…有り得ない。
「それで?
言いたい事は、おしまいかしら?」
あたしは、満面な笑みで優子に問う。
「な、なんなのよ、その言い方…っ」
多少震える声で言う、優子。
ふふっ…
想像通り、ね。
「残念だけど」
そう言って あたしは、
床に落とされた ユウの衣装を手に取り、満面な笑みのまま…
言ってやった。
「アンタの方が よっぽど
可哀想だと思うんだけど。」
って。