危険BOY'Sにキスをして。

ヨウを見て、 一番に目についたもの。

それは…

「無いと思ってたら、そんな所に…」

左手に持っている黒いハンガー。
そのハンガーには、服が掛けられていない。

ヨウの目線の先には…
あたしの右手。

「どういうことだい?」

いつもと同じ低い声。


…だけど。

何かが 全く違う声。

「これは…」
あたしが話し始めようとした時。

「ごめんなさい、黒峰くん…っ!」

崩れるように、地につく優子。
瞳からは、涙。


「どういう事かな?桜井さん。」

「私も、こんな事言いたくないんだけど…
  黒峰くんの服、李鈴さんが…っ」

あっさりと嘘をつく優子。

「李鈴さんがハサミで切ってるの知ってたの に…
  私達、何も言えなかったの…っ!」

「…それは、本当かい?」

絵梨、と ヨウは最後に付け足す。

聞かないでよ…。


「……」

「黙る、って事は…本当なのかい?」

「……」

言えない。

あたしは 約束をした。
“黙っててあげる”って 約束した。
例えそれが優子でも。
約束を破る最低な人間にはなりたくない。


「君には、失望したよ。」


ヨウは、そう言うと、
あたしの右手から ボロボロになった服をサッと取り、屋上から出ていった。

ただ…
出る前に、一つ言葉を言い残して。

「これから、覚悟しておけ。」

きっとそれはあたしに対してだろう。


再び、 あたしと優子達だけになった。

「もう、貴女には用は無いわ。
 いい加減、昼食にしたらどうかしら?」

「誰の所為で、昼食が遅れたんだ」
と、言いたいくらいだ。


「…言っとくけど」

優子は、 ドアに手をかけ開けようとした あたしを止める。

「約束した覚えは無いわよ?
  …失望されて、残念ね。」

あたしは、それを聞いて 直ぐに 屋上を出て行った。

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