Hair cuts
「浩人のやつ、愛華…ちゃんに告白する」

馴れ馴れしい浩人とは違い、遊里の方は、まだ私たちを呼び捨てるのに抵抗があるようだった。

「はぁ?なんで?」

「なんでって、好きだからじゃない?」
 
吸ったタバコを地面に落とすと、遊里は足で踏みつけた。正直嫌だな、と思った。けれど、次ぎの瞬間、友里は火の消えた吸殻を摘むと、ポケットから携帯用灰皿を取り出し放り込んだ。灰皿を携帯しているなんて意外だった。案外しっかりしているのかもしれない。

「もともと、今日のことは計画的だったんだ」
 
携帯用灰皿を弄びながら、遊里は白状した。

「計画的?」

「うん。さくら…ちゃんたちが今日花見に来るって聞いて、それで、偶然を装ってね」

そういえば、お花見へ行こうと約束した昼休み、近くに二人がいたような気がしなくもない。

「浩人のやつ、ああ見えて結構シャイなところあるんだ。だから、愛華…ちゃんと話すきっかけをつかめなくてさ。びっくりした?」

つぶれてぺしゃんこになった前髪をかきあげながら、遊里がこちらを見た。人の良さそうな垂れ目は奥二重で、ちょっとだけ眠たそうな印象を与える。

「うん、びっくしりた」

「だよね」

 遊里が困ったように笑った。いつも振り回されてんの、俺。そう言って、また前髪をいじった。前髪に触れるのがくせなのかもしれない。

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