白いパーカーと黒いパーカー
その後も私は喋らない。

理由は簡単で、彼は友達でもなければ知り合いでもないからだ。

「知らない人と話しちゃダメっていわれたか?」

彼は無邪気に笑った。

私はツンとしてそっぽを向く。

せっかく星を見に来たのに嫌な気分だ。

「一人で見るより、誰かと見た方が楽しいぞ?」

彼は無邪気な笑顔のまま続ける。

「それとも親と見たかったか?」

少しバカにされたような気がして、私は彼を睨んだ。

でもその時初めて気がついた。

彼の目が笑ってないことに。

深くかぶったフードが、彼の目に影を落とす。

何となく同じにおいを感じた。

「親なんていない」

「そんなことないだろ?
今は仕事中なだけさ」

彼は星を見上げて笑った。

私も空を見上げる。

「僕も昔は君と同じだった。
でも年をとってからようやくわかったけどさ」

「そんな年寄りには見えない」

私がそういって振り向くと、息をのんだ。

さっきまで白一色だった彼の顔が黒くなっていた。

そして私の目を見て微笑んだ。

「こんなに大きくなって…
もっと近くでもっと長く見守ってあげたかったな」

儚くも優しい笑顔で私の頭をなでた。

フードの中の彼は少しずつ、夜に溶けていく。

私は何を思ったのか、彼の顔へ手を伸ばす。

きっと羨ましかったのかもしれない。

夜に溶けていくことができる彼が。


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