【BL】初恋いただきます。
突然なくなった拘束の力。
事態に体がついていかず、俺はその場に座り込んだ。
「――大丈夫か!?」
状況が呑み込めたのは、真剣な面持ちで俺の肩を揺すった要さんを見たときだった。
「か、要さん………?」
くっきりと手形の残っている手首を、優しく擦ってくれる。
「くそっ………。アイツ………」
忌々しく呟き要さんが睨んだ先には、口元を押さえ、床に座り込む凪さん。
口の端から血が出ている。
要さんが殴った痕だ。
「痛いなぁ……いきなり殴るなんて酷くない?」
「涼の痛みの方が強い。まだ殴り足りないぐらいだ。」
見たことないぐらい恐い表情の要さんは、凪さんを睨み付けた。
「凪、もう二度と涼に近付くな。」
「………分からないな。どうしてその子にこだわるんだよ?どこにでもいる、普通の子供だ。要がそこまでのめり込む要素は、どこにもないのに……」
「お前には関係ない。それに……」
要さんは俺の手を取って、立ち上がる。
「――コイツの魅力は俺だけが知っていればいい。」
そう言って要さんは俺を横抱きにした。
「うわっ!?ちょっ、要さん、降ろして!俺、歩けるから!」
「だめだ。黙ってろ。」
有無を言わさぬ口調に、俺は口を閉ざした。
そのまま踵を返して歩き出す。
「要……俺は……」
呼び止めた凪さんの声に、要さんは足を止めた。
「凪、お前は勘違いしている。俺に対する感情は愛じゃない。一人になりたくなくて、ただ同じ境遇で育った俺を好きだと勘違いしているだけだ。」
「違っ――」
「俺は――涼以外を愛せない。誰であっても、コイツを奪うことは許さない。」
要さんは一度も振り返ることはなく、でもはっきりと凪さんに言葉を投げた。
再び要さんは歩き出して、俺は要さん越しに凪さんを見た。
凪さんは俯いたまま、両手を握り締め、その場に立ち尽くしていた。