魅惑の果実
私と美羽の顔を何度も見比べている明日香。


私はお母さん似だから、美羽とは似ていない。


でもそれで良かったかもと思う。



「でも良かったね。 危ない目に遭わなくてさ。 そんなに泣かなくても大丈夫だよ」



美羽に笑顔で優しい言葉を掛ける明日香の方がお姉ちゃんっぽい。


私は本当に子供。


自分だってバカばっかりやってるんだから、美羽をこんなに怒る資格ない。



「取り敢えず帰ろっか」

「私は家に帰れないので、この辺で時間を……」

「何言ってんの。 ほら、行くよ」



驚く美羽から顔を背け、一人先に歩いた。



「私、明日香!! 宜しくねっ」

「は、はい」



後ろで明日香と話をする美羽の声は徐々に明るさを取り戻し、楽しそうだった。


良い子……そう思う。


それなのに、どうして優しく出来ないんだろう。


意地を張ってるのかもしれない。


今の家族に溶け込みたくないのかもしれない。


中途半端に関われば、辛い思いをする。


ただ傷つきたくないだけ。


そして妹に八つ当たりをしている。






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