魅惑の果実
行きたい大学は偏差値が高くて、今のままだったら絶対に入れない。


それに大学行く為のお金だって貯めないと……。


頭が重い。



「何でそんなにお金稼ぐ必要があるわけ? 美月のお父さんだったら、大学の費用も、生活の費用も困らないだけ出してくれるでしょ?」

「あぁ……うん、どうかな?」



曖昧に笑って誤魔化した。


進学の話を親にした事ないし、別にまだ言うつもりもない。



「お父さんが政治家なんて格好いいよねぇ〜」

「そんな事ないよ。 どこにでもいるおじさんだよ」

「どこにでもいないから〜!! うちのお父さんなんて普通のサラリーマンだもん」



明日香のお父さんだって大手銀行のお偉いさんじゃん。


お父さんに大切にされてる明日香の方が羨ましいよ。


きっと無い物ねだりなんだよね。



「全員席に着けぇ〜」

「げっ、もう来た!! 美月、また後でね」



担任の先生が教室に入って来て、私たちはそれぞれ席に座った。





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