魅惑の果実
膝の上で握った拳が酷く震える。


初めて人を殴りたいと思った。



「今週いっぱい猶予をあげるわ。 結果みせてね? 期待してるから」



最後に満面の笑みを見せた咲さんは席を立ってお店を出て行った。


堪えていた涙が溢れた。


少し前の私ならこの場で答えを出したはず。


学校なんてどうでもいい。


家族がどうなろうと関係ないって……。


一番に浮かんだのは美羽の顔だった。


お父さんが職を失うって事は家族が路頭に迷うって事。


そんな事になったら、美羽はどうなるの?


私の所為で美羽が不幸になるなんて……そんな事ダメ……。


ぜったい、ダメ。


テーブルに肘をつき、顔を隠すように頭を抱えた。


テーブルが涙で濡れていく。


今自分が考えている未来の事を思うと、止められなかった。


きっと今まで好き勝手してきたツケが回ってきたんだ。


これは自分の所為。


他の誰でもない。


私自身の所為だ……。





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