魅惑の果実
いつも早く時間が過ぎて、早く大人になって、早く独り立ちしたいと思っていた。


けど今は、時間なんてなくなってしまえばいいとさえ思う。


そしたら私はいつまでも桐生さんの恋人でいられる。



「桐生さんとはいつ話すの?」

「忙しい人だから、まだ分かんない。 連絡してみる」

「顔見て話せるの? 大丈夫?」

「出来ることなら電話で済ませちゃいたいけど、私が見たいの。 桐生さんの顔を」

「そっか……」



会えば決心が鈍るかもしれない。


それでも会いたい。


私の決断に桐生さんは何て言うかな。


すんなり「分かった」って言うのかな?


それとも引き止めてくれる?



「私さ、桐生さんと会えて良かったって思ってるよ。 後悔なんてない」

「そりゃそうでしょ! あんなミステリアスなイケメン早々いないからね。 もうあんな上玉現れないと思うよぉ〜?」

「上玉って何!? なんか古い!」

「あはははっ!!」



わざとふざける明日香。


おかけで少し心が楽になった。





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