魅惑の果実
寝室や書斎、全ての部屋を見て回った。
懐かしみ、思い出にふけっていると時間が経つのはあっという間。
気付けばここに来て二時間が過ぎていた。
ふと、鏡に映った自分の顔を見ると、酷い顔をしていた。
赤くなった目と鼻。
涙で崩れた化粧。
ダメ……こんなんじゃ桐生さんに会うなんて無理……。
心を見透かされてしまう。
鞄の中から手帳を取り出し、メモ紙を一枚破り取った。
自分が最悪な事をしようとしてるのは分かってる。
でも、やっぱり会えない……。
紙にペンを走らせた。
“桐生さんへ
大切な人が出来ました。だからもう会えません。一方的にごめんなさい。さようなら……。
美月”
手紙の横に鍵を置いて、リビングを出た。
靴を履いて玄関のドアの前で立ち止まった。
ここを出たら本当にサヨナラだ。
今すぐリビングに引き返して、何事もなかったかの様に桐生さんの帰りを待っていたい。
子供ができたんだよって言ってしまいたい。
涙と一緒に漏れそうになる声を我慢して、ドアノブを捻った。
外に一歩踏み出す事がこんなに辛いなんて……もう、こんな思いはしたくない。
懐かしみ、思い出にふけっていると時間が経つのはあっという間。
気付けばここに来て二時間が過ぎていた。
ふと、鏡に映った自分の顔を見ると、酷い顔をしていた。
赤くなった目と鼻。
涙で崩れた化粧。
ダメ……こんなんじゃ桐生さんに会うなんて無理……。
心を見透かされてしまう。
鞄の中から手帳を取り出し、メモ紙を一枚破り取った。
自分が最悪な事をしようとしてるのは分かってる。
でも、やっぱり会えない……。
紙にペンを走らせた。
“桐生さんへ
大切な人が出来ました。だからもう会えません。一方的にごめんなさい。さようなら……。
美月”
手紙の横に鍵を置いて、リビングを出た。
靴を履いて玄関のドアの前で立ち止まった。
ここを出たら本当にサヨナラだ。
今すぐリビングに引き返して、何事もなかったかの様に桐生さんの帰りを待っていたい。
子供ができたんだよって言ってしまいたい。
涙と一緒に漏れそうになる声を我慢して、ドアノブを捻った。
外に一歩踏み出す事がこんなに辛いなんて……もう、こんな思いはしたくない。