魅惑の果実
次の日、重たい頭を抱えて実家に向かった。


顔もパンパンで瞼も重い。


昨日は全然眠れなかった。


朝鏡を見たら今まで見た事がないくらい酷い顔をしていた。


化粧をしても全然誤魔化せなかった。


実家の玄関のドアを開けて中に入ると、音を聞きつけた家政婦が慌てて駆け寄ってきた。



「お帰りなさいませ!!」

「父はいる?」

「は、はい。 書斎にいらっしゃいます」

「分かった」

「今はどなたもお入れにならない様に……」

「私にはあの人の言い付けを守る義務はない」



家政婦の言葉を遮り、御構い無しに書斎に向かった。


今まで良い子じゃなかったんだから、今更聞き分けの良い子なる必要なんてない。



「お姉ちゃん?」



階段から降りてきた美羽と鉢合わせた。



「誠治とは上手くいってる?」

「それがね、つい最近付き合い始めたの」



幸せそうな美羽の顔を見て私も嬉しくなった。



「そっか、良かったね」

「直ぐに言わなくてごめんなさい。 誠治君には私からお姉ちゃんに話すからって言ったんだけど、恥ずかしくって……」





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