君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
「はぁ!?なにそれ、マジで言ってんの!?辞めてどうするんだよ、これから結婚するっていうのに」

「ちゃんと考えてるよ。…お前も覚えているだろ?高校が一緒だった田中。数年前事業始めたんだよ。前から声を掛けられていたんだ。一緒にやらないかって」

「経営の方をか?」

「あぁ。…この歳になると新しいことを始めるのにも今が限界だと思うしな。それに興味もある。…勿論菜々子にもちゃんと話してあるよ」

迷惑かけてしまうかもしれないけど、菜々子はついてきてくれると言ってくれた。

「…そっか。ついに東野も女優先するようになっちまったんだな」

「えっ?」

そう言うと藤原は笑いながら話し出す。

「だってそう思ったのは櫻田のためなんだろ?自分の仕事の都合で向こうで生活させたくなかった。…それに早く一緒になりたかった。…そうだろ?」

いつもの勝ち誇ったような顔。
悔しいけど図星。もう菜々子と離れて暮らすなんて無理で、かと言って辛い思いをさせたくなかった。
早く結婚してずっと一緒にいたかった。

「…自分でもダサイと思うよ。女一人で大事な仕事を変えようとしているんだから」

それでももう絶対に離したりしたくないんだ。菜々子だけは絶対に。
菜々子以上に好きになれる女なんて、もう出逢えることはないと思うから。

「なんで?全然ダサくなんてねえじゃん。逆に俺は東野の判断は正解だと思うぜ?この歳になると、妙にひと肌が恋しくなるし。…いいぜ?疲れて仕事から帰った時に奥さんと子供がいるって」

「なんだよ、さっきまで愚痴ってたくせに」

口ではそんなことを言いつつも笑ってしまった。

「それとこれとは別なんだよ。とにかくいいもんだぜ?結婚するって」

結婚、か。
数年前の俺には考えられなかったな、結婚なんて。
< 145 / 368 >

この作品をシェア

pagetop