君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
突然聞こえてきた声に、思わず仰け反ってしまった。


「アハハハ!相変わらず櫻田さんは面白いなぁ」


「ふっ、副社長!」


隣を見ると副社長はお腹を抱えて笑っていた。


「驚かさないで下さい!びっくりしちゃったじゃないですか!」


「え~だって俺、そんな気配消したわけでもなく普通に来ただけだよ?櫻田さんが集中しすぎていただけ。それより、時間だよ」


「えっ...」


副社長に言われ時計を見ると定時をとっくに過ぎていた。


やだ。全然気づかなかった。


「仕事熱心なのはいいことだけど、たまには手抜きも大事だよ?」


「...はい」


その台詞、副社長に言われると妙に説得力があると思っちゃうのは私だけかしら。


「それと!我が社は基本残業ゼロを目指す会社だからね。俺の秘書の櫻田さんがばりばり残業していたらまずいだろ?」


「...はい」


ごもっとも。


「それでは申し訳ありませんがお先に失礼します」


パソコンの電源を落とし、帰ろうと立ち上がった時


「あー待って!俺も秘書課に用があるから一緒に行こう」


「えっ...秘書課に、ですか?」


珍しい。殆んど秘書課になんて顔を出さないのに。


「ほら!櫻田さん早く!」


「あっ、はい!」


副社長に呼ばれ、慌てて荷物をまとめ後を追う。
そしてエレベーターを待っている時、差し出された見覚えのある紙袋。


「これ、櫻田さんからの差し入れってことにしておいてね」


「えっ...なんでですか?これはー...」


「いいから」


エレベーターが辿り着き、乗り込む。


「そういうことにしておいた方がいい時もあるでしょ?」


そう言って笑う副社長。

だけど私には副社長の言葉の意味がよく分からなかった。


すぐ下の階にある秘書課にはあっという間に辿り着き、副社長続いてエレベーターを降りる。


「あの、副社長...」


声を掛けた時には副社長は既に秘書課のドアを開けた後だった。


「やぁ、みんな。お疲れ様!」


「えっ...副社長!?」


「お疲れ様です!」


「お疲れ様です」


ドアの向こうからはそんな言葉が聞こえてくる。そして


「櫻田さーん!なにやってるの?早くおいでよ」


「あっ、はい!」


副社長に呼ばれ慌てて秘書課に入ると、意外にも殆んどの同僚がまだ残っていた。
そんな彼女達の視線が一気に集まる。


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