君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
いや。それは明らかに副社長がついた大嘘なんだけど...。


ちらっと副社長を見ると、ばっちりと目が合った。
話の内容が聞こえていたのか副社長は可愛らしく口の前で人差し指をたてて『ないしょ』のポーズ。


ここで否定するわけにはいかないわよね。だって副社長はきっと私のために嘘をついてくれたんだから。


「あー...うん、実はそうだったの。恥ずかしいんだけど」


そう言うとやっぱりみんな笑い出す。


「えー!なんか櫻田さん、そんなキャラに見えないのに」


「副社長に嘘つくなんて、よく出来ましたねー」


「あっ!それより!女嫌いだった東野部長の秘書時代の話、聞かせて下さーい」


「私もそれ気になってました!」


「うっ、うん...」


やだな。
ついさっきまでは秘書課のみんなとは、ギスギスした関係だったのに。副社長の鶴の一声で変わってしまった。
副社長はきっと気付いていたのよね。私が秘書課のみんなとあまりうまくいまっていないって。


「櫻田さーん!こっちの東京バナナも開けちゃってもいいですか?」


「うん、もちろー...ん」


あれ?
そういえば私、さっきから新しいの開けてばかりだよ、ね?
一つも開いていなかった気がする。


えっ。ってことは副社長は一個も食べていないってこと?

秘書課内を見回すが、既に副社長の姿は見当たらない。


やだ...。まさか本当に私のために?


「櫻田さん、ちょっと」


「あっ、はい!」


私を呼ぶのは秘書課チーフ。

私が秘書課に配属された当初からの先輩だった。今はチーフ。秘書課の中で一番古い。


「なんでしょうか?」


するとチーフは周りに聞こえないよう、そっと耳打ちしてきた。


「良かったわ。櫻田さんに副社長をお願いして」


「えっ...」


するとチーフは微笑む。


「うまくいっているじゃない。副社長と」


「はぁ...」


うまくいってる、んだよね?きっと。
たまにイラッとしちゃうこともあるけど、尊敬できるところも沢山あるし、今日みたいなこともしてくれるし...。


「櫻田さんが初めてよ?副社長から聞かれたの。秘書課内での櫻田さんは大丈夫か?って」


「えっ...」


嘘。副社長が?


「それに今日だって副社長に外出させられたでしょ?」


「はい」


東京バナナを買わされに。
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