君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
私の階段を降りるヒールの音だけが響き渡る。


「明日も仕事ないし、今日は家で思いっきり飲んじゃおうかな」


帰りにスーパーへ寄って美味しいおつまみでも作っちゃったり。


そんなことを考えながら階段を降りていた時、急に鳴り出したスマホ。


足は止まり、慌てて鞄からスマホを取り出す。


「...圭吾さんからだ」


ディスプレイに写し出された名前を見ただけで一気に嬉しさが込み上げてくる。

そして、慌てて電話を出た。


「もしもし...」


緊張のあまり声が震える。


『...菜々子?』


名前を呼ばれただけなのに、耳元から聞こえてきた圭吾さんの声に胸がきゅんと鳴る。


「はい。...あっ!電話ごめんなさい」


『いや、こっちこそ悪かったな。なかなかかけ直すことが出来なくて』


「いいえ!」


全然です。だって今こうやってちゃんと電話くれたもの。


「あっ、そっちは今何時ですか?時間大丈夫ですか?」


『大丈夫だよ。仕事終わりの夕方だから』


時差があるから、日本が夕方ってことは...。


「えっ...今なんて?」


夕方って聞こえたのは、聞き間違い?


耳元から聞こえてくる笑い声。

そして聞こえてくる足音。


『だから今は仕事終わりの夜7:38なんだけど』


その声に耳に当てていたスマホはゆっくりと下へおりていく。


「菜々子の付けている腕時計は同じ時間じゃないのか?」


足音は止まり、代わりに聞こえてきたのは大好きな人の声。


「圭吾...さん?」


ゆっくりと振り返るとそこにはいないはずの圭吾さんがいて、私を見つめてはクスクスと笑っていた。



「...自宅謹慎なんて、何やらかしたんだ?菜々子」


「圭吾さん...」


見間違えなんかじゃなくて本物の圭吾さん。


私はまた階段をあがっていく。


「仕事、全部放り出して来たよ。...菜々子が心配で」


階段を登り終わると、目の前には圭吾さん。
これって夢じゃないよね?まさか偽者の圭吾さんじゃないよね?


「少しくらい頼ってくれないか?俺に」


その言葉に涙が溢れてきてしまった。


「圭吾さっ...」


圭吾さんは両手を広げてくれて。『おいで』って言ってくれる。
紛れもなく、本物の圭吾さんだ。

私はなんの迷いもなく圭吾さんの胸の中へ身体を預けた。

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