オモイデバナシ
俺達の住んでいる街から海水浴場までは、結構距離がある。

まず近所の駅から、ここらで一番大きい駅まで電車で30分。

その後駅前からバスに乗り換えて20分。

そこから渡船に乗って、小さな島へと渡る。

その島っていうのが、国定公園にも指定されているとても綺麗な島だ。

家族と一緒に、俺も何度か行った事があるので、道中困るような事はなかった。

千秋はというと、親に連れられて以外のこういう遠出はあまり経験がないらしく、俺の後をチョコチョコとついてくる。

何だか子供の頃の事を思い出して、懐かしい気分になった。

やっぱり俺は、今でも千秋のお兄ちゃんで、リーダーらしい。




…ほんとはお兄ちゃんじゃなくて、彼氏の方がいいんだけどな。



「うわあー!海だぁー!!」

渡船乗り場から見える海に、千秋ははしゃぐ。

確かに、夏くらいしか海には来ないもんな。

住んでる場所が海から遠い俺や千秋にとっては、新鮮な光景だ。

潮風、磯の香り、カモメの鳴き声…。

何で海って、こう意味もなく心が弾むんだろう。

千秋と一緒に居ると、その弾み具合も何割増しのような気がした。

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