オモイデバナシ
更衣室に行って五分もしないうちに。

「こうちゃーんっ」

千秋の呼ぶ声が聞こえた。

もう着替えを済ませたらしい。

早すぎる。

さては服の下に水着を着てきたな?

小学生みたいな奴…。

そう思いながら振り向くと。

「……っ」

そこには、目を奪われる光景があった。

おとなしめなデザインのワンピース水着に身を包んだ、千秋の姿。

スラリと伸びた足、控えめに、でも確実に発育し始めている胸、丸みを帯び始めている体つき…って、なんか言い方がいやらしいな、俺。

でもそんな千秋は、変な意味ではなく、爽やかな色気を漂わせていた。

何ていうか、健康的っていうか…。

ああもう、何言ってんだ俺はっ。

「こうちゃん…?」

あんまりまじまじと俺が見るせいで、千秋は少しモジモジする。

「変かな…そんな見られると恥ずかしいんだけど…」

「い…いや…いい…すごくいい…」

俺はグビッ、と唾を飲み込んで答える。

「え…それって…」

みなまで言わせるなよ…。

俺は頬をかきながら。

「似合ってる…ぞ」

小さな声で呟いた。


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