オモイデバナシ
水着を誉められてからの千秋は、それはもう上機嫌だった。

さっきまで俺の視線にモジモジしていたのはどこへやら。

水をかける、ビーチボールをぶつける、海の中で背後からしがみつく。

もう暴れ放題。

お転婆ぶりを遺憾なく発揮していた。

ついでに言えば、背中にしがみつかれた時に柔らかい二つの膨らみが当たって、俺をしばらく動けなくした事も追記しておこう。

とにかく、千秋はやっぱりこうでなくちゃ、という程のはしゃぎぶり。

散々振り回されてヘトヘトになったものの…まぁ、楽しかった。

元気よく暴れまわる千秋は子供の頃のままだったし、千秋がいつもの明るい笑い声を上げるのは、俺にとっても嬉しい事だった。

「ふぅ~、つっかれたー!」

ひとしきり遊んで、千秋は砂浜に敷いたシートに腰を下ろす。

「はぁーっ、元気だなぁ、千秋は」

俺も隣に座り、大きく溜息をついた。

「だって」

千秋は目がなくなるほど微笑む。

「こんな楽しいの久しぶりだもん。海来てよかった。やっぱり夏は海だよね!」

「……」

最初は二人きりなんてどうなる事かと思ったけど、こんなに喜んでくれるんなら来た甲斐があったってものだ。

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