オモイデバナシ
何とか三人組を追い払ったものの、トモも俺も泣かされた格好。

結果としては痛み分けだろうか。

…女の子の千秋だけが、唯一ピンピンしている。

子供心に、俺かっこ悪いな、と思ったり。

「こうちゃあん…」

千秋が心配そうに俺の顔を覗き込む。

「こうちゃんだいじょうぶ?」

「見るなよぉ…」

喧嘩が弱くてすぐ泣かされる男の子としても、プライドがある。

女の子に泣き顔見られるなんて、恥ずかしいしかっこ悪い。

「こうちゃん痛い?」

「見るなって~…」

近づいてくる千秋を、片手でトン、と押し返す。

「こうちゃん」

千秋は困ったように、おろおろと俺のそばにしゃがみ込む。

と。

「姉ちゃん」

突然さっきまで泣いていたトモが、千秋の袖を引っ張る。

「姉ちゃん、おしっこしたい…」

「え?」

千秋は困ったように俺を見た。


「こうちゃん、トモおしっこだって」

「…」

どんなに泣き虫で喧嘩が弱くても、千秋とトモにとって、俺はリーダーであり、お兄ちゃん。

全ての選択権や判断は、俺にあるのだ。

「秘密基地のトイレは、こっちって昨日決めただろー?」

涙を拭い、トモの手を引っ張る。

「え?覚えてないよ、僕…」

漏れそうなのか、トモはもじもじしている。

「こっちだって」

トモを連れて歩き出す俺。

そんな俺を頼もしそうに、千秋は笑って見つめていた。


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