オモイデバナシ
だっていうのに。

あいつはいつも、俺が忘れかけた頃にやってくる。

私の事、忘れないでって言ってるみたいに。




22歳の、ある梅雨空の日。

「まー、千秋ちゃん!久しぶりぃっ」

玄関から聞こえる母さんの声に、俺は階段から階下を覗いた。

…そこには、すっかり大人になった千秋の姿があった。

スラリと背も伸びて、女の子から女性に成長している。

でも、活発そうな、勝ち気そうなあの表情は相変わらずだった。

最後に会ったのは俺が17の時だったから…5年ぶりか!

もうすっかり忘れられていたと思っていた俺は、突然の千秋の訪問に驚いた。

「よ、よぉ、久しぶり」

階段を下りながら、ぎこちなく言う。

…実を言うと、俺には一つ不安があった。

5年ぶりの突然の再会。

俺は22歳、千秋は19歳になった。

どっちももう大人だ。

子供の頃とはお互い変わっている。

だから、もう今までのようには接してくれないんじゃないかと思っていた。

でも。

「こうちゃん!」

千秋は俺の不安なんてどこ吹く風、あの時と同じように満面の笑みで俺を呼んだ。



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