オモイデバナシ
そう、不安だったのはこの呼び名だ。

長く会わなくて、どちらもすっかり大人びて。

俺は千秋が、「耕介くん」なんて呼ぶんじゃないかって思っていた。

昔からのあの呼び方で、もう呼んでくれないんじゃないかって思ってた。

だから、千秋が何の迷いもなく「こうちゃん」って呼んでくれた時、肩の力が抜けるような気がした。

無駄な心配だった。

こいつはいつまで経っても、俺の子分の千秋なのかもしれない。

「何だよ突然、今日はどうした?」

そう尋ねると、いかにも活発な千秋らしい返事が返ってきた。

「今日お休みだったんだけど、急に町内の運動会に駆りだされちゃって…ちょっと100メートル走してきたの」

もちろん一等賞だったけどね、と、千秋は自慢げに言った。

昔からすばしっこかったもんな、千秋。

駆けっこだけは、どうしても千秋には勝てなかったっけ。

…その会話をきっかけに、俺と千秋は5年ぶりの昔話に花を咲かせた。

「そうそう、こないだおばちゃんから聞いたぞ。トモがヤンチャしてるんだって?」

「そうなの」

千秋は苦笑いする。

「こうちゃんからも言ってやってよー。勉強もしないで、毎晩遊び歩いてるんだから」

そう言ってしかめっ面をする千秋は、相変わらずのお姉さんの顔をしていた。



< 68 / 96 >

この作品をシェア

pagetop