逆ハーレムに巻き込まれました。




そして、現在。



「えへへっ、まさか噂の転校生さんと一足早く友達になれるなんて!嬉しいなっ」


「……あー、私も嬉しいよ」



友達かどうかは疑わしいのでとりあえず笑っておくと、彼女は嬉しそうに抱き着いてきた。暑い。


――彼女の名前はリタ・エルルージュ。


肩の上で揺れる柔らかな茶色の髪を持つ彼女は、私と同じく『魔法陣構築科』に所属しているらしい。


実は寮での部屋も隣だったらしく、以前から転校生の存在は知っていたのだとか。



「構築科って、私以外に女の子がいなくて淋しかったのっ!これからよろしくね!」



そう言って、上目遣いで私を見てくるリタさん。


うん、さすが美少女。超かわいい。守ってあげたい感じがする。


けど、



「…………チッ」


「…………むー」



後ろで睨んでる、イケメン二人組にも構ってやってくださいって。


私はお腹の方に回された手をさりげなく外しつつ、イケメンズの方へリタさんを押す。


すると。



「ってめぇ、リタに抱き着かれてうらや……いや、なに引き剥がしてんだよ!」


「そうだよー?せっかくリタが抱き着いてくれてるのにさぁ。邪険にするなんてひどーい!」


「……え?」



何故か、気を遣ったつもりの相手に冷たい視線を向けられた。

え、何この理不尽。ってか、じゃあ何をしたらその不機嫌オーラを納めるんだよお二人さん!


私は心の中で『残念なイケメン』というレッテルを貼りつつ、リタさんに弁明しようと向き直る。


すると、



「もー!二人そろって、セリナちゃんに酷い事言わないの!セリナちゃん、本当にごめんね!」



小さく頬を膨らまして二人を軽く睨んだ後、私の方に向き直って手を合わせてきた。可愛い。



「あー、いいよ別に。私こそ、そんな風に思わせる言動を取ってごめんね」



私はそれに苦笑を返しつつ、まだ睨んでくるイケメン達から目を逸らす。


……と、そこでふと思った。



(そういえば、リタさんと彼らの関係ってなんなんだろう)



とりあえず、イケメン二人はリタさんの事が大好きっぽい。でもお互いに牽制しあってるし、二人ともリタさんの彼氏ってわけじゃなさそうだ。


……じゃあリタさんは、どう思っているんだろう。どっちかが好きとかあるのかな?


好奇心の湧いた私は、リタさんの服の裾をツンツンと引っ張ると耳元に口を寄せてこっそり聞いてみた。


それを聞いたリタさんは一瞬驚いたように目を見開き、……それから。



「違う違う。二人は、ただの友達だよっ!」



とても綺麗な笑顔で、キッパリと言い切った。


その素直な明るい笑顔に、私は思わず天を仰いでしまう。



(……頑張れよ、イケメン君たち)



――どうやら私は、

転校先で鈍感すぎる美少女に出会ってしまったようです。




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