もしも私が―。

「凶器の刃物は、多分鎌だろう。時間をかければあの跡を残す事は出来るはずだ」

「それでは、早速エリスの身辺などを調べてみます」

 矢城さんはそう言うと、福崗さんと急いでドアを開けて出て行った。
 その姿を見ながら松谷さんはエールを送り、私に話を持ちかけた。

「頼むぞ!矢城、福崗くん!ところでお嬢さん、良かったら捜査の協力をしてくれないかな?」

「協力?」

「ああ、キミは夢待ちをしてくれないかな?」

「夢待ちって?」

「キミが化物の夢を見たら、私に知らせて欲しいんだ。良いかな?」

「はい」

 私は小さく頷いた。
 それから松谷さんの携帯番号を教えてもらって、家であの夢を待った。
 
 でも、本当は乗り気じゃなかった。
 だって友未を助けられなかったのに……もう本当は何も見たくなかった。

 初めから、夢なんて見なきゃ良かった……!



   **********


 
 数日後、ベットに伏せっていると、携帯が鳴った。

「はい」

 電話に出ると、からかう様に陽気に言う声が、携帯の向こうから聞こえてきた。
 福崗さんだ。

「もしもし?夢の調子はどう?」

「調子って……あの私、やっぱり」

「辞めるって言うの?」

「え?」

「分るわよ、それくらい。私は刑事なんですからね!……柳田さんのこと、気にしてるのね」

「……はい。もう、辞めたいんです。夢なんて見たくない」

「そう。でもとんだ甘ったれね」

「な!? 」
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