代償
セイロンティー。
「上時総長、好きなの?」
うん。
膝枕でよく。
「マスター、言ってたね。上城はセイロンティーが好きだって」
「だっけ?コーヒーは?」
「好きなんじゃなーい?」
コーヒー?
飲んでるよ。
上時は。
お酒も飲んでるよ。
チャンポンだってしてるっけ。
………よくやるよ。
「チャンポンしてるじゃん。マスターんとこで」
「氷北組のとこでもしてるぞ」
「氷北組ねー」
出ました、氷北組。
いい字してるって、上時が言ってた。
「文香ちゃんのこと、紹介してないよね?そろそろ、会合じゃない?」
「そうだねー!一ノ倉(いちのくら)族長、呼んでくれないかなー!」

一ノ倉族長?
氷北組の族長?
へー。
居酒屋の経営の?
ほぉーう。
「上時総長が弟みたいに一ノ倉族長を可愛がるよね。兄弟みたい」
「どこか雰囲気が似てるし。2人ともイケメンだしな」
「一ノ倉族長の下の名前って何?」
「さぁ?族称が一ノ倉族長じゃん」
一ノ倉族長。
上時と仲がいいんだ。
一ノ倉に上城ね。
………どっちも、凄い名前だね。
聞き慣れないよ。
………私もか。
冬音なんて。
聞かないよ。
私が知ってる冬音は………。

両親だけ。
首を吊って自殺した。
両親だけが、唯一知ってる冬音。
冬の音。
………どんな音よ。
冬って。

そしたら。
上城なんて、上の城じゃん。
どんな城よ。
凄いなぁ。

「一ノ倉族長はいい人だよ。ちょーっと、一般人離れしてるけど」
「だよね。髪長いよねー」
「ポニーテールだろ?似合うよな。無条件に」
………ポニーテール。
男の人が?
………凄い。
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