掌編小説集

687.オリジナルブレンド

はみ出た毛色の規格を認めてくれないから
由々しき事態だと受け入れてくれないなら
玉手箱は真空パックして自ら外に作るまで

戦意喪失‐アゲインスト‐の輩を悟っても
私を度外視して二人だけの世界へ逝こうと
慰謝を手早くゲリラを興起した訳ではない

オーラルな他人の意見に流される柔軟性で
手荒に扱われ撃墜させられ偏重した風聞に
幽閉‐クリーニング‐されるぐらいならば

三人にとっては好き勝手にルビを振られる
この粘着質な世界はただのトランジットで
過去を責める必要も未来を嘆く必要も無い

違和感を我慢して軛の歪みが生まれる前に
私を引率し招致すれば未知数でも練り直し
風向きが変わって手厚い市民権を得られる

激アツな闘志を燃やして風の噂にも総力戦
超絶稀覯本の孤立効果をリカバリーすれば
天寿を全うしなくても併記してリスタート

べらぼうな利器で興じる人殺と言われても
扱いやすい遜色な引き立て役と言われても
相対ズケズケといちゃもんをつけられても

二人が愛し合っていて完全無欠だったこと
私しか知らないから私が貫き通した手記を
認めて(したためて)創刊し伝えなくては

本当は私も後追いしたかったのではないか
いや私なら分かってくれると掛目を考えた
だから何も言わずとも一足先に逝っただけ

二人の幸せそうな死顔が最期に見れたから
土被り道草途中の束の間の別れなのだから
心中お察しせず悲しくはない寂しくもない

誰も信じてくれないと荒み怒りがわくのに
涙が止まらない理由が分からず仕舞いでも
怯むことなくサブリミナルなシンパシーを

込み入った入江にかまくら風の秘密基地は
懐石料理が並ぶ宴会の宴席にガンを飛ばし
粒ぞろいである二人の親友で居て良かった

術中にはまったように惹きつけてやまない
沸き立った雨音の子守唄‐リサイタル‐は
雑念が削がれるほど根強くインフィニート

赤い糸を手編みでペアリングへ結んだ二人
画廊には去り際のカット割の絵面が出展し
刃毀れした偏愛の功罪が混在する死屍累々

門外漢な通説は天敵であり廃絶に止を刺す
賽の河原に良心の呵責など愚にも付かない
点描の不法投棄で失踪宣告‐ミッシング‐
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