掌編小説集

702.ブルースターのクロシェ柄はユーカリのフェルマータ

君と私と警察とで実勢‐スタミナ‐を真面から総結集して、とある犯罪集団であるテロリスト達を地べたからサイズアウトの如く、千客万来の迎賓館から断末魔の墓所へ退けることに成功した。
一味を一網打尽にと完全には壊滅出来なかったけれども、君の父親が焼成に身命を賭してまで戦ったことは、命取りな職業病‐フォールスチャージ‐であると覚悟の上でも、人の口に戸は立てられなくて抵触を言いまくられたとしても、筋骨隆々で向学心‐インテリジェンス‐な君の父親の仲間である警察が後を引き継げば、陶板名画のように利発で聡明な技術の粋を集めて、潔癖に全うしエキスパートに成し遂げるだろう。
協力者であった君や私の役所‐プリー・バーゲン‐はすべて終結したから、物々しい朦朧体‐シナプス‐を醸し出すいらんことだらけの私は、兆候‐リファレンスチェック‐なく自ら君の元から去ることにした。
君達との高校生活という高い密度‐グロリア‐と飽きが来ることが無い果報者の花盛りを、留保すること無くいつもの今を下方修正して、高卒認定試験の合格と同時に児童養護施設を退所すれば、用済みの私は名実ともにごめんあそばせと行方を晦ませる。

けれどまた浅からぬ犯罪‐ヘドロ‐があれよあれよと言う間にそこここに、ギアを上げたノックマシーンばりに急増、取扱注意の球種‐ショールーム‐だと思わされることもなく、手入れが行き届いたガーデニングのパティオから、天蓋付きの別宅‐ゲストルーム‐へと招くのは、もちろんツァイガルニク効果でホームランのあのテロリスト達。
そもそも論として君の元から去っても隠れ住んでいる訳ではないからか、ご丁寧に私にも挑戦状が送られて来てしまった。
私はポピーのように決して優しい限りでは無いし、テロリスト達の語法や図解が雑過ぎるだけなのだけれども、このままそのままに偶発的にパーになるように放置出来ないのは、ジェントルでダンディな真剣勝負‐サラブレッド‐とは程遠く、手詰まりの仕返しに石を投げて咒い弱みに付け込むように、オンボーディングよろしくインパチェンスな友達2が巻き込まれていたからだ。
最高気温がお見逸れしましたと有数の40°C以上の酷暑日ではないけれども、35°C以上の猛暑日や25°C以上の夏日でもない気密だから、30°C以上の真夏日の表示領域‐ビューポート‐のアンケートは難しい。
ブロアーな動輪‐ドライブイン‐なんて便利なものは無くて物足りないから、長旅‐ハイキング‐みたく遠路はるばる毛細管現象に乗り継いで、久方振りへの警察へ手包みの挑戦状を渡しに行ったら、ホストだからとわざわざ懐かしの部屋まで案内されて、そこには今も変わらぬ姿の班長と班員と、更には新たに加わった部長とやらが出迎えてくれた。

確か警察官の階級は、上からこんな順番だったはず。

警視総監
警視監
警視長
警視正
警視
警部
警部補
巡査部長
巡査長
巡査

警視総監から警部補までがキャリアで、警視長から巡査までがノンキャリアだったっけ。

階級が分かったところで門主にさえも態度を変えるつもりは無いけれど、マニアックに熱く語っても気苦労が絶えない班員と、常日頃からハイブリッドな板挟みの中間管理職な班長とは違い、部長は基本性能‐タイプライター‐のような手技の気構えで、一計を案じた別件逮捕の添削‐トリミング‐に、撮り下ろしの議題に石臼を挽いて勤しむ、エッセンシャルな命令系統‐プロテクション‐タイプに見える。
手が込んだ絢爛豪華な品種改良を箱詰めにして人気を博し、反芻の因習‐アクティビスト‐で策があるとモノ言う株主に対して、個を優先し過ぎて暴走しないように規律を考え、しかしながら時に個を優先して世界を考え、一極集中‐コンパクトシティ‐を統制するインティマシー・コーディネーター。
更には争いごとが起こらないように根回ししながら鎖樋‐クラッタリング‐して、もし被検体同士の予期せぬ争いごとが起こったとしても、スタジオでコーナーのVTRを見るコメンテーターばりに、贈呈された牡丹とにじり口でどちらかにも加担せずに、視線誘導で産声を上げ続ける被害を摘み取りながら、砂糖依存‐リピーター‐が最小限になるように動き続けるのは、コールウェイティングのレコーディングのように織り込み済み。
プレゼントとして送った絵画を密通した画廊を介して買い戻せば、間接的に金のやり取りが出来る古典的なモノから、クラウドファンディングの返礼品として紛れさせて、直接的にナニカを密売する現代的なモノまで、イタリアのレッチェというときめくような言葉だけで、靴のヒール部分に隠された証拠にお釈迦を進呈。
発給された組子の勘合を嵌合することが趣味みたいな、笑い声だけなら開放感のある悪の大魔王みたいな、屈託の無い笑顔こそ頗る機嫌が悪いみたいな、細かな偏食‐レタッチ‐を繰り返すことをとても好みそうな一躍‐キャプテン‐系列。

「久しぶりだな。」

ご丁寧な自己紹介に挑戦状の引き渡しも済んで帰ろうとしたら、部屋には先客もとい久方振りの君と友達1が居たことに今更ながら気が付いて、律儀にも終わるまで黙って視界に入らないようにしていたようだ。
またしても友達1はメンチを切るように睨んでいるけれど、あの時とは違う真新しい辛辣な意味だと理解出来てしまう。
一方君はというと友達1の覇気のある検問に口を閉ざしていても、私が居ることを受け流すことは出来ていないようで、紡ぐ言葉を探しきれずに口を開け閉めするだけで言えずじまい。

「今までどこに居たんだよ?」
「別にどこに居たって関係ないでしょ。」
「突然学校からも施設からも居なくなって、俺達がどれだけ探したと思ってんだよ。」

正式な手続きを経て児童養護施設を退所したから、行方不明者としては受理してくれなかったみたいで、警察としても協力者としての功績の事実と犯罪者かつ未成年という真相を相殺して、ホークと呼ばれるハッカーの君のことはもちろん、ブラックキャットと呼ばれるクラッカーの私のことも口外しないことを選んだようだ。

「《友達2》だって心配していたんだからな。」

私を友達だと言ってくれた友達2は歯痒くも既に袖の雨となっていて、後輩1の告別式と同時に裏切りが発覚した後輩2は、遠慮しいの添い寝‐ドッキリ‐かと思うほどに、改変した生態‐ヘクタール‐の在り処ごと行方知れず。
しかしながら最終形態‐バックヤード‐を含めたその全てが、公表‐ローンチ‐されずに隠蔽されているということは、その埋葬された霊障の証拠を掴んでいるということで、至るところにある審理の櫓の原画‐パネル‐には、応援部隊の肉声を含めたピンからキリまでの捜査情報が書かれている。
観光地‐ゲレンデ‐の守衛‐バリケード‐に伝授する随意契約の君が既に居るならば、鳶に油揚げをさらわれる私は衍字であるから、この額絵‐ビュースポット‐には復刻‐イートイン‐の割高は不必要で、わがままボディの内部留保‐テイクアウト‐の割安が然り。

「それ、届けに来ただけだから。」

カモミールを添えてだるまさんが転んだに誘われても、憂鬱で絶食な退屈凌ぎにもならない思い出話に、宴もたけなわが占領して花を咲かせる気は無いから。
時計回りのオープニングと反時計回りのエンディングで、もう用は済んだとばかりに今度こそ帰ろうと踵を返す。

「キミが必要なんだ!」

背中に投げかけられた部屋の外‐フロア‐まで響きそうな音量の言説は、現存するそんな感情は溜めるだけ溜めておいて、簡単に爆発させずに必要な時まで取っておいて、前段階ですらえらいこっちゃとばかりに急進的なラベンダー。
一瞬シーンと凍て付いて急速冷凍‐フリーザー‐してから、頭突きされたようにざわりと空気が震えて、落ちた水滴が波紋を広げるかの如く、微熱が竈で発酵して熱帯夜へ着実にそれは広がっていく。

「え、ぁ、その、えっと・・・」
「鍵。」
「へ?」
「鍵。妹ちゃんは学校でしょ?」

意を決したような初耳の嘆願が告白じみていることに気が付いて、そしてそれがすぐさま到達して自覚してしまったから、顔を真っ赤にしながらしどろもどろに全振りだけれども、そんな君に苦しい言い訳を言われる前に素通りして、出戻りのような私は手を差し出しながら君の家の鍵を要求する。

「何かリクエストはある?」
「え、何の?」
「夕飯。」
「あ、えっと、オムライスで。」
「了解。」

どれでもいいとかどれかだけとかではなくてどれもがいいのだから、君は知っているのか私は教えたいのかその哲学は分からない。
けれど逆さ吊りすら姿を消した私を呼び戻せるのは、礼儀正しい老骨な使用人ではなく紛れもない君だけ。
のっぴきならない切実な事情が側面の材質だったとしても、切々とロザリオに祈る君が私を必要としてくれているのならば、逸れた迷子がやっと会えたようなジャスミンな関係であったとしても、ハズバンダリートレーニングのように平気なフリをして、恩師‐フリースクール‐の炊き出しのように一大事の下支えとして、ハンドキャノンでもロケットランチャーでも撓みを撤去、何でそんな話をとは思うこともなく全面協力をしよう。
色彩豊かな水彩画の福寿草に紙風船のぼんぼりの万華鏡で、夢みたいな夢の続きを引き続き、微力ながらも神苑‐ロマンチスト‐に始めましょうか。

洒落にならない避けるべきものを身になるように予習させることは、悪意のある者にとってはこちらの守りたいものに対して毒となるものを、教えることになってしまう持ち切りの浪曲‐カンファレンス‐。
団員‐ドーパミン‐からの御布施‐カネ‐を待つだけの持つ者はもう古く、正確な情報をいち早く持つだけの者では既に出遅れて、真実か否かは問わずに発言権‐ゴールポスト‐への影響力‐ハンドリング‐を持つ者、それが時代に発出を言い付けられる天下の権力者‐CEO‐となれる。

誰でも出来るけれどもやりがいのある人気を食う満員な仕事であり、やる気次第でいくらでも稼ぐことが可能な高額収入かつ好評な案件、人見知りでもキャリアアップに最適でもあるからこそ一緒に成長しましょう。
などといった書いていないからと言って本当に記載が無かったのかと疑わしくなるような、あまりにも育成に詳しいことを書かないというより書こうともしない強行策‐ブランディング‐でも、粒立った突起‐ポテンシャル‐さえあれば全くの初心者でも大丈夫みたいな、効果覿面に徳を積める堆肥の着工の誘い文句はとても優雅なのに、名物に旨い物なしなその中身は息も絶え絶えに真っ黒。
同じ仕様の御仕着せを身に纏うグラマラスなネグリジェの掲載に、ありもしないことを長々と心を動かされるようにフワッとしたことを書いていて、洞窟‐ファサード‐の隠し部屋‐アーチ‐の放物線‐ロケーション‐は抜群だと、MVをPVに変えて物価高騰‐プロモーション‐すれば、読みが甘くても柔肌‐テンプテーション‐に過ぎないから、精神論も根性論も脱臼しても堪え忍ばないと罰(バチ)が当たると、お淑やかなハズバンドから追熟‐グルーミング‐されて信じ切ってしまったから、覗き穴からたらふく不貞行為へ唆されていることに気付かないまま、度忘れに逸れた良からぬ悪い道にナビゲーションされて進んでしまうのは、図らずも遠からずではなく配架な死刑宣告の読みが当たっただけ。

「そんなに警戒を剥き出しにしなくても、何も取って食いやしないよ。」

クセつよワイルドとは程遠く人の懐に入るのが上手い根明の強襲、親和性の高い心惹かれる形状記憶されたいなせな顔をして、統治者の幹事が近影を晒してでも先頭に出張って、軽量な計量で貴公子ばりに恭しく宥和‐ファセット‐を狙いに来る。

「まだ何も終わっていなくてね。やっと始まったばかりなんだよ。特別性も特有性もあって一隅を照らせる、類を見ない遠心力‐セントラル‐な人材が足りないんだ。だから、希少価値‐ハイレベル‐である《キミ》と縁付きたい雇い主として、試合巧者の竣工としても勧誘‐ピックアップ‐しに来たんだよ。」

輩出された駆け落ち‐トロフィーハンティング‐を巻き上げるかのように、旗揚げ‐レジューム‐に伴って糖度高めの悪徳商法で、ヒエラルキーの開運グッズを爆買いに買い漁ろうとしたとしても、いくらイケイケの殖産興業を手掛けて逆玉の輿をチラつかせても、大言壮語の空焚きでは似たり寄ったりの分譲‐ボーネルンド‐で、化粧詰めされた経歴詐称の猫に鰹節であるに過ぎない。

「けれど、聡明‐ブラボー‐な策士‐パーフェクトゲーム‐が出来る、《キミ》の供物‐ノゾムモノ‐が分からないんだ。」

人知れぬように初競りの天窓の背後を取りたいからといって、摘果‐パーソナライズ‐された上げ膳据え膳に加えて、軽薄短小で尻軽にメートルを上げた引出物‐ハッピーアワー‐で釣ろうとするなんて、長蛇を逸する失策をスロープへ陳列するに匹敵して、いかにも買い控えを推奨する悪名高い悪の組織って感じで、鏡台から花を散らし手折られるだけの抗議の自殺なんて、バイオマスな情事‐デュエット‐の事情の問題提起にしても、稼働率を上げる為に懐に飛び込むにしても、なんとももったいなさすぎる。

「いくら多才な店構えで鬼才に朗読されても、人間工学‐ゴールデンタイム‐が分からないなら、寝返らせるなんて尚更無理ですね。」

国賓待遇のイグミレーションで白い結婚の発生源へ整理券で呼び込まれた、窪地‐ケマンソウ‐へのカスタムな移築も移設も、医学的他覚所見や見地の尺度を算出なんてしなくても、音読‐おまいう‐の腹筋崩壊で備蓄‐デッドストック‐に草が生えて、シティボーイの馬鹿げたウザ絡みなジーザスを即決でお断り。

しかしながらあわや警察からは信用のがた落ちで、裏切りの密会だと問い詰められてしまうけれども、滅相もない上にそもそも密会ですらないのだけれども、防犯カメラからピックアップされたサムネイルは、随分とメジャーどころがせしめていたようで、近辺を旗竿地のような場所でフェンス越しに安全を確保して、防犯カメラの位置もコリジョンコース現象みたく不利になるように計算した上での、破砕帯のように仲間割れを狙った痛烈な関連痛‐テンダライズ‐。
もともとから私のことは出費がかさんでも勉強(値引き)する気は無く、小腹が空いたからジビエでもとはならず立ち食いに食べ応えもなく、一聴に誤審でバンザイして(諦めて)いる感じがしないでもなかった。
知らぬ存ぜぬのサンルームの私は疑われ、知らぬが仏のサンルーフの君は追い詰められる、無観客で不鮮明な盗用‐ホッピングラッシュ‐は邪推の受難に見舞われた。

自分を思って言ってくれた言葉の数々はいつか自分を陥れる為のものなのかと、こんなの普通ではないしこの先に何をやらされるのかと、そしてもしもやった後の後がない状態に何が待っているのかと、内部告発気味な証拠があるから切り捨てられないからなんて、後年にも高を括れなくて自分の身も危うくなる。
それに対して今の言葉は聞かなかったことにしてやるという優しさか、言いたいことは理解したという後ろめたさか、どちらなのかとカフェウォール錯視を誘発する引くに引けない泥仕合を、待った甲斐があると君に千摺り‐オンリー‐な執着を示すのは、激流の勝ち抜き戦を触発‐スヌーズ‐しまくって無傷‐ビブグルマン‐を自称する空前のサイバーテロリスト。
自分はペアガラス製の揺りかごの中で安全に守られているのではなく、理想の世界‐エンパイア‐を創り出す設計図を、描くことに囚われているピカイチな精霊だ。
聖霊の礼拝堂ごとエレガントな自らが一定程度狙われるのは、真下の世俗から見上げる漬物石的な力を持つ者の証とほざき、自分は通り一遍とは違うという割れんばかりの自尊心。

不意打ちと妨害工作でわざと嵌めて潜在的にいびっておいて、人質を助け出せるかなどと君をチャレンジャー気取りにさせておいて、君が自分よりも下であるから手も足も出ないと驕って、ライバル視して生み出す内戦の戦火は黒煙も黒炎も上がって、自分の方が君より上だと確認するために暴徒化した家訓‐デュエル‐。
しかしながら、模型‐モデリング‐の銘菓‐モチーフ‐ばかり増えていくけれど、決めポーズで降誕する造形の絵付けにはまだまだ程遠い。
サイバーテロリストが見ていることも聞いていることも見越して、居場所を特定して警察が到着するまでの時間稼ぎにと、音声も映像も乗っ取って君と朝焼けな会話をしよう。
私が壊した狭隘‐カプセルトイ‐からするりと君が入って(侵入して)、すーっと滑空する君にちょこんと乗った私が昇華‐フォロー‐すれば、先制パンチのバフどころか特注の隠しフォルダよりも隙が無い、突破なんて生温い機能美‐アクロバティック‐な伐倒は、加算ではなく乗算のターンオーバーで抉じ開ける助太刀‐ノッキングハイスピード‐。
サイバーテロリスト自らが単なるゲームと称したのにも関わらず、痛いところを突かれてしまったのか嘘が付けずに、その話に触れられたくないからか素に戻って下手をこき、半乱狂に苛立って静まりきることなく愚弄に呂律が回らなくなって、下手を打って知らず知らずの内に転倒したら嫉(そね)みに自爆。

T型人間の君はハッカーで、構築するのが得意で攻撃は苦手なハッキングで主‐ガイド‐に動いて。
I型人間の私はクラッカーで、破壊が得意で守るのは苦手なクラッキングで補助‐サポート‐して。
得手不得手を補い合えばショルダーハックなんてしなくても、タッグを組んだ布陣は完璧にミッションコンプリートして、相性抜群で一心同体の特長な意匠は褒章もの。

「一歩間違えれば、俺も《サイバーテロリスト》と同じになっていたかもしれない。」

サイバーテロリストは自分を誇示したくて誰かに勝ちたくて、君に勝負を挑んで倒すことに意義があるとばかりだった。
君もモロに命のやり取りはしないまでも、物珍しくからかったり楽しんだりしていた節があるから。
罪を罪と思わずに賞レースのようにただただ強さを目指して、強い敵だと尚の事ワクワクするような戦って勝ちたいがために戦うような。
可もなく不可もなくな等身大で立位に再出発からと負けないためではなく、空き家を繁華街へ倒壊させるのが気持ちいいからと、控室‐バルコニー‐から勝つためだけに戦うような。
ミレニアムな歳月をかけた個展‐ピラミッド‐のエンタメが完成すれば、そこで持続が止まってしまって綻び崩壊が始まるのではなく、衝動のまま獣のようにこんなところで終わりではないと、デストロイヤーの業態は客間の座敷を開場して運試し。

「一歩も間違えなくても一歩間違えたとしても、君は《サイバーテロリスト》とは同じにはならないよ。」
「慰めはいいよ。」

機敏な暗転は甲乙付け難いと落胆して傷心の君へ、近すぎると逆に見えなくなるのかと理解して弾き返す。
履修した許状を断罪してコペルニクス的に校正出来る君は、些事な非礼の所縁の解離にも気付ける人だから。
それでも盗人にも三分の理はオシャンティーな様式美だと君は訝しむ。

「知識はいくらあっても邪魔にならないと思う?」
「なに?藪から棒に。」
「膨大な知識があるからこそ、その知識に雁字搦めにされてしまう時もある。いくら知識があっても《サイバーテロリスト》の知識は偏っていたから。善だけでも悪だけでもなく善悪両方持っている君は、《サイバーテロリスト》と同じになるはずがないじゃない。」

目の前が真っ暗な崖で一歩踏み出せば崖下真っ逆さまでも、半歩でも振り返れば歩いて来た道以外の地面も広がり続いているのだから、歩いて来た道が見えないのは超えて来た壁があるのだから、標高は中腹で更には麓からは急勾配であって引き返せなくても、囲いの中で誰にも頼れず声もあげられず胸の中で叫ぶことすらも諦めて、ただただ受け入れるしかないことはなく、国生みの三貴神らしく枝分かれした雨樋のように別の道をゆけばいい。

「まあ、次世代の神になりたいと奮起してバイオテロを起こしたり、反乱分子‐アンチテーゼ‐を睨(ね)め付けて対抗したりするより、北側斜線制限も日影規制も天空率も関係無く、発信地からダイレクトパスで人工衛星を落として、鉱脈の目釘ごと治世のすべてを無抵抗に、地球ごと終わらせた方が至極簡単だけれどね。」
「人工衛星とか地球とか随分と壮大だな。自分はどうすんだよ?」
「寒気がするほどに自分が助かろうとするから色々ややこしくなる。AIを超えたAIGがASIになってMRSAになったとしても、グロリオサを見ようとすればするほど撮れ高目掛けて近付けば近付くほど、空襲も空爆も鰹節を猫に預けることにしかならないから、忽領にはなり得なくてやもすれば遠退いて味噌を付けるだけだよ。」
「達観してんな。」
「別に。まあ過去に色々あったから、かもね。寝て半畳起きて一畳って言うでしょ。失意泰然の得意冷然で何事もほどほどが良いのが当然。そうでなきゃ私はここに居ないから。」

死んで逃げて悩みも楽になるのか生きて苦しんで苦悶しても挑むのか、いやなんだかんだ言っても不遇でも精力的に、棺を柩にしない死んで花実が咲くものか。

「捌けられないゴタゴタに巻き込まれた上に、身廊の正面突破に君一人で立ち向かって戦うことはないよ。現実問題、何事も一人きりでは無理だしね。引っ込んでいては好き放題やられるだけだから。こちらから行動を起こさなければならないと思っているよ。」

行動を読み切ることが出来なくても離れていても手伝えるように、USBブートのビルトインへ先見の明‐プランニング‐。
既存の細工‐センサー‐に手を加えた飛び道具で、ヒヤシンスのストリーミングリレーを繋げられるように。

「それに私も一人じゃないし。」

君に私はオーバーヒート状態で必要無いと思ったから離れたけれども、私を繋ぎ留めているのは警察でも義務でも使命でも友情でもない。
少し相談していいかとか実は悩んでいることがあってとか、弱みや悩みを打ち明けて弱さを見せることは想像以上に勇気のいることだ。
自分の不安や弱点を話すということは私ならば受け止めてくれるという、吸い込まれるような深さで心から信頼している証の表れだと思いたい。

「君が言ったんじゃない、私が必要だって。気安く頼られて使われるのは悪い気分じゃないからね。」

高設に据え置きした最古の晩成であるインポスター症候群を、斑でも咀嚼して一気に飲み干したら達眼‐ダッシュボード‐。
君を見るのではなく君の見ている方向を、剣を振るう君の背後から振りかぶるモノを、同じ方向を目指す私が日本刀で後ろ手にモノと交えれば、同じ小節の展望台から一緒に見ることが出来るだろう。

君と私と警察が利害の一致で手を組んだサイバーテロリストさえ退けてしまったからか、業を煮やしたテロリストが君の妹を秘密裏に人質風情にして、君がシャドーボックスのように何重にも閉じ込められてしまったところは、メインシステムがその性質上外部のネットワーク回線からは切り離されている施設。
建物内部よりメルトダウンからメルトスルーの放出を狙って、チャイナシンドロームを引き起こすことが目的。
君の妹は無事に奪還されて保護されたものの、暴走したメインシステムの制御‐スリープ‐と施設の強固な防犯警備の解除‐ロック‐と出入り口に張り巡らされた電子爆弾の無効化‐シャットダウン‐は、いくら君でも止めたり避けたり切ったりと同時には辿り着くことが出来ない。
そしてメインシステムの接見にかかりきりになってしまうから、併発した伏兵のような防犯警備と電子爆弾にまで手が回らない。
しかもご丁寧に遮断された場所なのにも関わらず、君の様子を専用アプリで動画の独占生配信をする念の入れよう。
もちろん視聴出来るのはURLを送り付けられた警察だけで、セミファイナルに呼び出された私と友達1はもちろん、現地に居る君でさえ世界中にある施設のどこに居るのかが分からない。

「とにかく、飛行機や船ではなく車移動であったことから国内は確実。連れ込まれた場所と移動時間からみてもここからそう遠くは無い。」
「だったらこの辺はそういう施設がありますよ。御誂え向きに周辺には都市部のような民家がなく、インフラの整備も間に合っていなくて不十分だったはずです。」
「詳しいじゃないですか。」
「大学の授業でやったばっかりなんで。横ばいである田舎の整備は急務だと。」
「なるほど。そこならば設備的にも時間的にも合致しますね。しかしあまり悠長にしている時間はありませんが。私は施設長か責任者に連絡を取り爆発物処理班も向かわせる。班長は班員と共に先に施設へ向かってくれ。」
「「了解!」」

友達1が広げられた地図の古株に当たる一地域を特定して指し示せば、道筋が立ったとばかりに部長の号令を合図に皆が出立準備に取り掛かる。

「ついて行かなくていいのか?」
「私が行く意味が無い。それに点数稼ぎに利用されるのはもうごめんだから。」

頭脳派ではあるけれども現場に行っても役に立たないと自分で理解している友達1自身はともかく、ここに居るとばかりに動きを見せない私に友達1が問い掛けてくる。
私の放った言葉にピリッとした空気になってしまったけれども、滂沱な友達2の雪化粧に自覚があるからかそれ以上は何も言われなかった。

「応援を向かわせましたから無謀な無茶はしないように。」
「そんなことを言ったって、この防犯警備はそう簡単には通り抜けられませんよ。電子爆弾に囲われているのを掻い潜るのだって、今から結審に参入されたって時間が足りなさすぎる。」

今のところ止められたのは電子爆弾の時限装置だけで、遠隔操作は出来ないものの防犯警備を止めても電子爆弾を処理しなければ、フィルタリングされたままでメインシステムと君には到底辿り着かない。

「大きな悪の為に小さい善を切り捨てる、それが当然なんですよね?妹を助けてくれたことには感謝してますよ。けれど《友達2》のことは許せませんから。俺がやらなきゃ誰がやるんですか?やってやりますよ、俺がホークってところを見せ付けてやりますよ!」
「ヤメロ!ヤケになるな!」
「落ち着きなさい!」

鳴り止まない注意喚起の警報音。
君が何かしら間違えば三者凡退。
欲しがり提灯記事のお詫び行脚。
身に付けた技術を裏切らないのは自分を敵に回したくないから。
持ち場への矛先をナチュラルに鈴なりにすれば我ながら有望株。
桁外れのプラセボでもそれがお好みならそう演じ振る舞おうよ。

「後は任せた。」
「了解。」

❝6 18 15 13 8 1 23 11 20 15 2 12 1 3 11 3 1 20❞

❝From Hawk to BlackCat❞

(26個しかなくても26までの数字が届けてくれる裏写りの筆跡)

瞬間、君の紋章がこの部屋にある警察のパソコンをクドいほどジャックする。
君が跳ね上げた自発性で大幅に弾く同軌道上を行くことで、私の自己流である後続弾の途上に死角‐ブラインド‐が生まれる。
試算された視程外の積み荷‐パプティクス‐、素振りを出稽古ナイズした一義的な所謂隠し玉ってやつ。

「なんだこれは?!」
「は?なに?」
「きた。グットタイミングなのはアルバトロス並に流石。」

部長を含めた警察や友達1が騒然となっている中、私はおもむろに警察のパソコンを操作し始めて、一台のモニターに映し出したのは点在するいくつかの住所。

「ここに行ってください。少なくともこの配信を見ている人間はいると思いますよ。」
「どういうことですか?」
「専用アプリとはいえ、生配信しているのだからネット回線には繋がっているでしょう。それを見ているのはここに居る人間だけじゃありませんからね。」
「・・・分かりました。向かわせましょう。」

苦い顔をしながらもオーディエンスの理由に納得して、取り逃したら元も子もないと部長は応援部隊を向かわせる。
施設前に到着しても足踏み状態で手をこまねいている班長と班員が、こちらの会話を聞いていたようでイヤホンから割り込んできた。

「お前、利用されるのはごめんだとか言ってなかったか?」
「利用されるのはそうですけど、協力ぐらいしますよ。皆さんを信頼していますから。」
「お前がそれを言うか?」
「どの口が言っているんだ。」
「私の過去なんて内部調査とかで根掘り葉掘り調べて分かっていますよね?私は誰も何も信用しません。最初から一切期待していない方がダメージが少なくて済みますからね。」
「じゃあ何故こんな協力みたいなそんな真似を?」
「その人間性で信用させたのはそっちですよ。石に布団は着せられずですから《君》の言う通りですけれど、それでも血が滲むような過酷に命張っているの知ってますから。《友達2》は怖かったと思いますし助けて欲しいと思ったと思います。けれど助けてくれなかったとは思わないと思いますし、ズタボロだろうが何だろうが恨みませんよ。そのやり方に賛成は出来ませんけど理解は出来ますから。それに《君》の父親の職場ですから、その人達のことを私はそもそも悪くは思わないですけれどね。」

壊す方法しか生み出せない能が無かった私に、壊すことが出来るなら救うことも出来るからと、助ける術を教えてその機会をくれたのは、君と警察だ。
生まれ変わったというよりは本来の磨かれた輝きを取り戻せたような気がして、そんなんだからなのかその声援を信頼出来た気もする。

「じゃなんで、お前も《君》もあんなことを?」
「あっちの音声がきているならこっちの話し声も筒抜けだと考えていいと思います。そういうの楽しんでいるタイプでしょうから。今は音声を切っているので大丈夫ですけれど、ただ気付かれないようにしたかっただけですよ。私も《君》も本気で思っていません。」
「つか、さっきから何やってんだよ?」

会話しながらもタイピングする手を一切止めない、オンステージ状態の私が友達1は気になるようで。

「《君》のUSBにバックドアを仕込んだ。テロリストもサイバーテロリストも《君》に執着していたから、私よりも《君》に接触する確率が高いと思って。案の定そうなったし。自走式のマルウェアのプログラムなんだけれども、理路整然としたルールベースのエンドトゥーエンドであるし、プロトタイプとはいえ急拵え‐ファルセット‐の上に、テロリスト‐アッチ‐に気付かれずに警察‐コッチ‐に繋がないといけなかったから。裏でこっそりと作動させているから時間がかかると思っていたけれど、予想より早かったから助かった。」
「じゃあ今施設と繋がってんのか?」
「ううん、ただ回線を一方的に繋いだだけ。《君》が閉じ込められる前に施設の外に投げ捨てたであろう、モバイルルーターを介しての遠隔だから回線の強度はかなり弱い。今度はこっちからアクセス出来るようにしなければならないし、他からの攻撃に備えられるようにもしないといけない。それに意外と手数が多いから足場が悪いとやりにくくて仕方がない。私がついて行かなかったのは勝手が違う遠隔より、最新鋭とはいかないまでも設備が整っていて回線が安定している、何より慣れているここからが良かったから。意味が無いって言ったでしょ。」

頭脳派でも武闘派でもハッカーでもクラッカーでもホークでもブラックキャットでも無い、無くて良いのが灯籠‐シグネットリング‐。
私は私のままで良い花暦の香炉。

「主語を付けろ!主語を!意味分からねぇだろうが!」
「だから意味が分かったらそれこそ意味が無くなりますよ。」
「お前は、そう・・・いつもいつも屁理屈言いやがって!」

別に屁理屈を言っているつもりはないけれども、ハッスルしたキレの良いツッコミは前にもそう言われた気がする。
別にそうじゃないことだけは微量でも分かって欲しいとか、理解を求めて訂正も修正もする気はないけれど。

「ただ協力はしますけど、それには条件があります。」
「条件?」
「防犯警備のファイアウォールを壊す許可が欲しいんです。私は《君》みたいに細かいのは得意じゃないんで、初めから壊した方が早いんです。もちろんセキュリティホールにならないように、ファイアウォールごと私のプログラムで覆った上でやりますけど。後で時間を貰えれば再構築は可能です。」
「・・・分かりました。ブラックキャットとホーク、いえ、《私》と《君》にお任せします。」
「了解です。」

この場でそんな許可が出せるのは部長だけなのだけれども、そんな信任するような思いを預ける言い方も出来る人だったみたいで、結構根は班長や班員と似ているのかも知れない。

「ファイアウォールを壊したらそっちの無線に繋ぎますから、各々の防犯警備と電子爆弾の処理はお願いします。私は《君》を手伝います。」
「分かった。万全な準備を整えて待っている。」
「・・・必ず止めますから、友達を、・・・《君》を助けてください。」
「ああ、任せておけ!」

班長の心強さと班員の力強さの頼もしさの食べ合わせに、いつも通りだと気持ちが扁平になるのは、この状況の下では良い傾向だと言えることにしておこう。

「いけるのか?」
「大丈夫、粉々にするから。」

気強い私に友達1は口角を上げた。
プログラムで覆ったファイアウォールをぶち壊して、防犯警備と電子爆弾を流れ作業のようにそっくりそのまま託したら、メインシステムと対峙している君の元へ向かいましょう。

壊滅するギリギリ寸前ではあったけれども扉越しに免れることが出来て、安全地帯と高を括ったテロリスト達を問題無く鎮圧して、脱獄なんて決して許さない身が持たない独房の獄舎へ、代理人‐パイプ‐ごと首根っ子を押さえて収監すれば、トドメの一撃で方が付いた反則負けは見事の見頃。

「よう、おかえり。」
「おう、ただいま。」

班長と班員と共に接戦を値切って帰ってきた君を、友達1が迎え入れて草の根運動‐ハイタッチ‐。

「あれ?《私》は?」
「ん?さっきまで居たはずだけど。」

部屋を見渡してみても後始末の指示に忙しい部長や細かい後処理に追われる班長、班員も後片付をしていて部屋全体が忙しない雰囲気ではあるけれども、防犯警備のファイアウォールの再構築をしているはずの私の姿だけ見当たらない。

「まさか・・・!?」
「おいっ?!」
「どうかした?」

ギクっと焦った様子で走り出そうとする君に、それを止めようとする友達1の何とも言えない不思議な光景。

「あっ・・・」
「どこに行ってたんだ?」
「これ。喉が乾いたから。後はついで。」
「おお〜」
「なに?」
「いや・・・なんでもない。」

近くのコンビニに行って色々買い込んできただけなのだけれども、腹の足しにと軽食込みの袋の中を覗き込んでいる友達1とは違って、君はなんでもないと言う割に何か言いたそうにしているのだけれど。
まあギグと奇抜に聞いたところで言いそうにないし、緊迫した的中率状態がやっと終わったシエスタなのだから、頭の働きは再構築の余力用に残して置くことにしよう。

そのまま君と共に再構築を終わらせてオーバーホールのスキャンも済ませて、お腹が満たされて口笛でも吹きそうな友達1ともまた明日と別れた後も、傷を癒やすようにゆっくりと家路に着く途中、大抵話し掛けてくる君があれからずっと黙ったままだ。
重い空気のコーピングには慣れているけれども、そういうのを君が纏うのは嫌だと感じる。

「やっと終わったね。」
「・・・・・。」
「妹ちゃんはもう帰っているかな?」
「・・・・・。」
「さっきちょっと食べたけれど、夕飯何にする?」
「・・・・・。」
「オムライスにしようか?それとも別のがいい?」
「・・・・・。」
「ねぇ、言いたいことがあるなら言って欲しいんだけど。」

いつもとは逆に私が君に話し掛けても全くもって好転しない。
最終楽章まで君が私を必要としてくれたけれども、やはり終われば不要なのだろうか。
ならばこのままあの時みたく別れた方が良いだろうか。

「キミは・・・」
「?」
「キミはまた、どこかに行くのか?」
「まあ、いらなくなったならどっかに行くしかないから。」
「・・いらなくって・・・!そんなことは誰も言ってない!」
「・・確かに、君には言われてないね。」

班長や班員には褒め言葉と共に労われて、部長には厳重注意込みのお礼を言われたけれども、テロリストとの攻防を終わらせた警察としては、ハッカーであるホークもクラッカーであるブラックキャットも二度と不要だと言われた。
暫くは身の安全の為に周囲を警戒してくれるらしいけれども、安全が確認されたらそれ以降は積極的には関わらないようにするとのことだ。別に君と友達1や私と縁を切るわけじゃないからと苦笑いされて、離れることが淋しいと思ってくれているようで、それに嬉しさを感じたのは自分でも結構意外な変化だった。

「俺だって心配したんだからな。あっちこっち探して。学校も施設も警察も真剣に探してくれなくて。だけど探し尽くしてそれでも探しきれなくて。置き手紙の意味だって考え抜けずに堂々巡りでさ。結局キミは自分から居なくなったのだから、元気でいると言い聞かせるしかなかったんだ。」

君は思った以上に優しくて脆くて強かった。
出会う前に戻れなくても紙くずとして捨てられなくても、今の今まで言わなかったぐらいに。

「でも突然現れてから今回また一緒に過ごして、当たり前に隣に傍に居て、相方っていうより相棒みたいで。ホークに必要なのはブラックキャットかもしれないけれども、俺に必要なのはキミなんだ。一緒に居ると落ち着くというか安心するというか、そんな存在はキミしか居ない。俺はキミが好きだ。友達じゃなくて恋人になりたい。キミと付き合いたい。もう居なくならないで、ずっと一緒に居て欲しい。」

映して欲しかった君の瞳に私が居る。
映したかった私の瞳には君が居るだろう。
どこにも相応しく無いと思っていたけれど、警察でさえ私でいいと思ってくれていた。
それは君達や警察がそのままの私を受け入れてくれたからだけじゃない。
変わった私も変われた私も変わらない私も、君達や警察は変わらずに傍に居てくれたから。
この渦巻く感情に無理矢理名前を付けなくても良い気がした。

「分かった。じゃあ、今から居候じゃなくて同棲か。」
「へ?いや、え?ちょっと待って!」

一人納得して歩き出すと君は慌てたように追いかけてくる。
さてどこから話そうか・・・と命題を色々思案しながら、二人分の足音が枕詞になって我が家へと近付いていく。
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