掌編小説集
706.香り立つ万能薬
組織故の弊害である相見積もりにふて寝を決め込まれても、集合ポストへの毒見がネックにならないようにしながら、無限の捜査から前足と後足の工程を積み重ねて、おつむが不明瞭な使い手とタイマンを張れるように、所作の動静で選曲し復顔にて絞り込む。
功労者から迅速に手に入れた手掛かりが次なる手掛かりの道標になるから、格好の場所に呼びつけなくても時たま熱い視線を送れば、総本山からの御来光を拝むべくモノクルに引き入れる。
ポケットに入れた片手をギュッと握り締めて感情の退避、血が滴っても涙が溢れても震えた声が口から飛び出さないように、呼吸を止めるかのように平常時との差異を静かに埋めるように、病み上がりはポケットマネーかつ独学の運指を起用する。
行かないで
逝かないで
冷たくならないで
温かいままでいて
私の前から居なくならないで
私の隣にずっと傍に居て
私を一人にしないで
誰かが死ぬのはもう嫌だ
触れる体温を失わないで
死なないで
生きていて
仕事の為に借り物の言葉で奇策な他殺の自死を選んだ父親から託されたから。
成長が見たかったと言って病死した母親から元気でいてねと願われたから。
私を好きだと言ってくれたあの人は私を守る為に不適切でも戦ってくれたから。
復讐を遂行したい親友から知らないフリをして偽って欲しいと言われたから。
誰もが実績のある実行犯であり約束も果たしてくれたから、私は日和らずに生きなければいけなくて、心が無いから模範的な生き方をしなければならなくて。
けれど心が壊れていた方が良かったと思えるのは、こんな気持ちを理解出来ない方が良かったと思うから。
一箇所でも狂うと失敗してしまうけれど、強さを見せ付けるように戦って勝たなくたってよくて、サービスエースを一回スパイクすれば勝ちだから。
思った通りになれば切なさに変わってしまう願掛けが、用意周到な計画の計算違いを生んで狂って逝っても、新旧織り交ぜてちゃんと失敗したものを成功させなければ。
異質に新設した計画には随分と自信があっても、個体差のある安物の自分には自信が無いから。
いつまで生きていればいい?
死んだら楽になれるって本当?
建屋の劣勢を言っていたら何かが変わっていた?
円熟味が増しても三人一緒に居られた?
全部私が問診さえも上手く出来なかったら
デンジャラスな中核に気付かれてしまったから
カンニングペーパーがあったって言えるわけがない。
完璧じゃなくていいから全部要らないから、ずっともっと一緒に居たいなんて。
占いみたいに未来が知りたいんじゃなくて、追想が染み入る過去の答え合わせがしたいだけ。
「我慢していることを言って?それは我が儘じゃない、迷惑でも甘えでもないから。言うのを押し殺して我慢している時点で、君の心は壊れずにそこにあるんだ。頼むから何でもいいからどんなことでも最後まで全部聞くから、お願いだから言ってくれ。」
腹落ちをぶっちゃけずに黙秘ならば、命の使い込みも嘘付きにはならないのに。
「一緒に死んでくれませんか?」
貴方と一緒に死にたいというか、貴方と一緒なら怒られない気がするから。
「方法は何でもいいし任せます。」
確実にイチコロで死ねるなら。
動機ならきっと誰かが考えてくれる。
言いたいことも思っていることも言えないこともたくさんあるけれど、口から出た言葉はこれだった。
私が生きなければならないとか、貴方に生きて欲しいとかじゃない。
皆が私に生きることを望むけれど生きて欲しいと願うけれど、私は生きることを望まないし生きたいと願わないだけ。
死ぬことを誰かに認めて欲しかった
死ぬことに誰かの許可が欲しかった
誰かに良いよって言って欲しかった
「分かった。方法は考えておくよ。」
だから大丈夫だという顔をしてくれたから、そう良かったと安心して意識を手放すことが出来た。
こういう時は拒絶したらパニックになって手がつけられなくなって、最悪自分から死ぬか周りを考えずに巻き込んでしまうから、そういう状況を作ること自体駄目であり、一旦受け入れて安心させて落ち着かせることが大事。
強くて硬いけれどしなりはしなくてポッキリ折れてしまうほどに脆く、表では光を浴びて裏で闇を背負う苦心惨憺の肌触り。
「変なことを言いました。忘れてください。」
「いや、方法は考えておくから。ちゃんと覚えておくよ。」
大荒れに迷いながら教えたことに、想定内とハッキリと答えを出してくれる。
私が喜ぶことをしているだけ言っているだけで貴方の感情はそこには無いと思っていたけれども、どうやらポスティングの設計ミスとかそういうことではないらしい。
「嘘は付かないよ。どんなことでも言ってくれたから良かったと思っている。君のどんなことでも受け止めたいから、必ず受け止めるから。」
確実に接触事故‐バットエンドコース‐だけれども、シフトチェンジする他のコースなら何がお望み?
いやそれ以外のコースなんてそもそも最初から選択肢に無かった。
「そんなことをしたら彼らが悲しむとか、ノスタルジックな綺麗事を言うつもりはないよ。君が苦しんでいるのに、それを良しとする彼らではないだろうから。もちろん誉められたことじゃないのは分かっているし、何が正解かなんて分からないけれど、俺がそうしたいから、君と居たいから。」
俺の傍なら安心だから。
身の安全は保証出来ないけれどなんて、お茶目な冗談は香りが立つ。
バトンリレーを突進しながら跳躍する、裏被りな頑張り屋さんをお慕い申し上げています。
「実行するかはともかくとして、俺も君となら死ねる気がするよ。今までの誰も出来なかった君の願いを叶えたい。俺が叶えることが出来るのなら、むしろこの上なく嬉しいことだよ。」
貴方が私を幸せにする未来ではなく、私一人だけが幸せになる未来でもなく、貴方と私の二人が幸せになる未来。
未来と区分されて集計されるものは、なにも転調を繰り返す現世のことだけではないから。
実際に死にたいとかじゃないけれど、肩の荷が下りてホッとした。
私は死んでもいいんだって。
生きなくてもいいんだって。
私以外が肯定してくれたから。
功労者から迅速に手に入れた手掛かりが次なる手掛かりの道標になるから、格好の場所に呼びつけなくても時たま熱い視線を送れば、総本山からの御来光を拝むべくモノクルに引き入れる。
ポケットに入れた片手をギュッと握り締めて感情の退避、血が滴っても涙が溢れても震えた声が口から飛び出さないように、呼吸を止めるかのように平常時との差異を静かに埋めるように、病み上がりはポケットマネーかつ独学の運指を起用する。
行かないで
逝かないで
冷たくならないで
温かいままでいて
私の前から居なくならないで
私の隣にずっと傍に居て
私を一人にしないで
誰かが死ぬのはもう嫌だ
触れる体温を失わないで
死なないで
生きていて
仕事の為に借り物の言葉で奇策な他殺の自死を選んだ父親から託されたから。
成長が見たかったと言って病死した母親から元気でいてねと願われたから。
私を好きだと言ってくれたあの人は私を守る為に不適切でも戦ってくれたから。
復讐を遂行したい親友から知らないフリをして偽って欲しいと言われたから。
誰もが実績のある実行犯であり約束も果たしてくれたから、私は日和らずに生きなければいけなくて、心が無いから模範的な生き方をしなければならなくて。
けれど心が壊れていた方が良かったと思えるのは、こんな気持ちを理解出来ない方が良かったと思うから。
一箇所でも狂うと失敗してしまうけれど、強さを見せ付けるように戦って勝たなくたってよくて、サービスエースを一回スパイクすれば勝ちだから。
思った通りになれば切なさに変わってしまう願掛けが、用意周到な計画の計算違いを生んで狂って逝っても、新旧織り交ぜてちゃんと失敗したものを成功させなければ。
異質に新設した計画には随分と自信があっても、個体差のある安物の自分には自信が無いから。
いつまで生きていればいい?
死んだら楽になれるって本当?
建屋の劣勢を言っていたら何かが変わっていた?
円熟味が増しても三人一緒に居られた?
全部私が問診さえも上手く出来なかったら
デンジャラスな中核に気付かれてしまったから
カンニングペーパーがあったって言えるわけがない。
完璧じゃなくていいから全部要らないから、ずっともっと一緒に居たいなんて。
占いみたいに未来が知りたいんじゃなくて、追想が染み入る過去の答え合わせがしたいだけ。
「我慢していることを言って?それは我が儘じゃない、迷惑でも甘えでもないから。言うのを押し殺して我慢している時点で、君の心は壊れずにそこにあるんだ。頼むから何でもいいからどんなことでも最後まで全部聞くから、お願いだから言ってくれ。」
腹落ちをぶっちゃけずに黙秘ならば、命の使い込みも嘘付きにはならないのに。
「一緒に死んでくれませんか?」
貴方と一緒に死にたいというか、貴方と一緒なら怒られない気がするから。
「方法は何でもいいし任せます。」
確実にイチコロで死ねるなら。
動機ならきっと誰かが考えてくれる。
言いたいことも思っていることも言えないこともたくさんあるけれど、口から出た言葉はこれだった。
私が生きなければならないとか、貴方に生きて欲しいとかじゃない。
皆が私に生きることを望むけれど生きて欲しいと願うけれど、私は生きることを望まないし生きたいと願わないだけ。
死ぬことを誰かに認めて欲しかった
死ぬことに誰かの許可が欲しかった
誰かに良いよって言って欲しかった
「分かった。方法は考えておくよ。」
だから大丈夫だという顔をしてくれたから、そう良かったと安心して意識を手放すことが出来た。
こういう時は拒絶したらパニックになって手がつけられなくなって、最悪自分から死ぬか周りを考えずに巻き込んでしまうから、そういう状況を作ること自体駄目であり、一旦受け入れて安心させて落ち着かせることが大事。
強くて硬いけれどしなりはしなくてポッキリ折れてしまうほどに脆く、表では光を浴びて裏で闇を背負う苦心惨憺の肌触り。
「変なことを言いました。忘れてください。」
「いや、方法は考えておくから。ちゃんと覚えておくよ。」
大荒れに迷いながら教えたことに、想定内とハッキリと答えを出してくれる。
私が喜ぶことをしているだけ言っているだけで貴方の感情はそこには無いと思っていたけれども、どうやらポスティングの設計ミスとかそういうことではないらしい。
「嘘は付かないよ。どんなことでも言ってくれたから良かったと思っている。君のどんなことでも受け止めたいから、必ず受け止めるから。」
確実に接触事故‐バットエンドコース‐だけれども、シフトチェンジする他のコースなら何がお望み?
いやそれ以外のコースなんてそもそも最初から選択肢に無かった。
「そんなことをしたら彼らが悲しむとか、ノスタルジックな綺麗事を言うつもりはないよ。君が苦しんでいるのに、それを良しとする彼らではないだろうから。もちろん誉められたことじゃないのは分かっているし、何が正解かなんて分からないけれど、俺がそうしたいから、君と居たいから。」
俺の傍なら安心だから。
身の安全は保証出来ないけれどなんて、お茶目な冗談は香りが立つ。
バトンリレーを突進しながら跳躍する、裏被りな頑張り屋さんをお慕い申し上げています。
「実行するかはともかくとして、俺も君となら死ねる気がするよ。今までの誰も出来なかった君の願いを叶えたい。俺が叶えることが出来るのなら、むしろこの上なく嬉しいことだよ。」
貴方が私を幸せにする未来ではなく、私一人だけが幸せになる未来でもなく、貴方と私の二人が幸せになる未来。
未来と区分されて集計されるものは、なにも転調を繰り返す現世のことだけではないから。
実際に死にたいとかじゃないけれど、肩の荷が下りてホッとした。
私は死んでもいいんだって。
生きなくてもいいんだって。
私以外が肯定してくれたから。