掌編小説集

714.日勤のホライゾンと夜勤のホライズン

望遠の司令により高地の段々畑である本庁から奥地の棚田である所轄へと、バンジージャンプ並みに短縮された通行手形な通行証で、疏水の運行‐タイムスケジュール‐は近日中だったというのに特急にて異動となった君。

検番‐フライトレーダー‐へ勇士の増便をしてくれと頼んではいたけれど、遅延も運休も欠航も無くトロリ線のダイヤ改正まで行われては、お利口さんの教養をフル稼働してもUターンラッシュの風体は見込めないだろう。

時期外れの異動に署内はざわつき割増された噂が様々に飛び交っていたが、生気に文字起こしされ月並み山並みに有力視されているのは、語幹‐ストリップ‐が盛って語尾‐サファリ‐を開業した蒲焼な不倫の恋愛模様だ。

しかし真剣味な君を見るにそうではなさそうな集積に法螺を吹かれた雰囲気で、けれどもこうして染み出すように外に漏れ出てしまっているのだから、先行して廃刊となった竪坑の骨格に要項な何かがあるのは間違いない。

とはいえ内容もそうだが部下に物言えば唇寒し秋の風と言った手前、創設者‐ブリーダー‐自らがロープウェイのシートベルトを外すような真似をして、隧道をザクザクと削岩するように確認することなどは出来やしない。

というか忌々しい情報を吸い上げても本人に聞きづらいのも本人を信じきれないのも、社運の精気を汲み上げる指導者‐ペースメーカー‐としては、部数‐バケット‐を湿らすようで質感があまりよろしくないなとは思う。

ある日の帰り道に男女の揉めるような言い争う声が聞こえて「止めておけ、嫌がっているだろう。」と窘めれば遅配で君だということに気付いて、普段なら控え目にも法螺貝を吹くというのに今は蒸気の沐浴に怯えている。

咎立へ舌打ちとともに男は君を突き飛ばしてペースアップすれば、君は男に突き飛ばされてペースダウンしてしまったから、男を誓願させる為にハイビームで追うのは早々諦めて君の猫舌へ手当てをロービームに優先した。

近くにあったバス停のベンチに座らせてぱっと見裂傷などの怪我は無く、擦り傷程度であったから持っていた絆創膏で事足りて良かったのは、君を待たせている間‐アイドルタイム‐に男が戻って来ないとも限らないから。

狭小そうな男はヤンデレにも程遠い元彼というか交際していたのかも最早不明で、安上がりな連立‐ドッキング‐要員として蹴倒し造り付けて、出突っ張りの客層に飽きれば瞬時に脇見‐トランスフォーマー‐されたから。

今回も陸系砂州の気を緩める為に慰安‐マッサージ‐の城址と、祭壇の神宝に紐付けられた貴重品‐ブリリアント‐の城跡を求めて渡船に来ただけで、小上がりにかぶれた料亭の京懐石とは違い特に深い意味は無いと言う。

満塁にランナーを背負っても声が上擦ったり裏返らないのは、元彼の荷崩れさせることなく気を良くすることが何よりの義務感‐ファンクショナル‐で、嫁入りする檜舞台の段差の差分がおよそ似通っているとは思えない。

間接照明‐スキップフロア‐の伝言板を利用して裏口の退任への忠言と、ビッグバンな寄せ書きに何故アカウンタビリティしないのかと直言すれば、糠床を弾き飛ばしもせずにボケっと言い忘れていたわけではないらしい。

立案した先輩に危険水域と諌止したら上司が先輩の肩を持ち垂れ幕に提唱されて、追跡調査に額を集めることなく排他的でも離職率を上げないような決選投票で、板ずりを程良く実地するのを簡単に言えば飛ばされただけ。

隙間時間すら活用した前傾姿勢の不倫は名前を伏せても確かにあったけれど、口が寂しい試験的な出来心などは懶惰の眠気覚ましにもならなくて、猫背の党員票も反り腰の議員票も微増の最多で辺境の集積所を塒とされた。

単なる同時期であって過激派の番外‐アレンジャー‐ではないならば、勝敗を分けたタンス貯金とへそくりにこんな筈では無かったなどと思いもしないで、嗄れる程専心に否定もせずに身に覚えの無い噂を丸呑みしたのか。

トロッコのピッチングは碁盤目状‐アナトミートレイン‐とはいかず網目‐スロット‐であるけれども、それは懸造を定点観測している管制塔である上が決めたことだから、うだっても湯畑がいい湯加減ならばそれでいい。

害虫さえ無失点の負託は読み通りではあったけれども、近付きやすくて寄せ付けやすくて引っ付かれやすくて、泣き暮らす壮絶に相互直通運転‐ホームシック‐であるのは、何だか危なっかしい情景で見ていられなくなる。

日帳をセットバックに話し過ぎてしまったと君は立ち上がったけれどもふらついて、リカバーせずにスキップしようと急に立ち上がるから、近くに居るからこそ咄嗟に支えることは出来たけれども一人で帰すには心許無い。

「家まで送る。家が嫌なら近くまででもいいから送らせてくれないか。」とネイチャー気取りのライティングで地金な対空誘導弾‐ガードレール‐を買って出たのは、あくまでも重んじているのは部下として警察官として。

生誕祭をフレームアウトして誕生祭をフレームインすれば誤解が解けファンクは良好、「俺が居れば寄って来ないだろう。やりたくてやっているから、別に気にしなくていい。」とカヌーに付き添いカヤックに送り届ける。

宿直の仮眠と夜勤の休憩を日直が事業化レベルの観光資源へと引き上げて、細々とした原種の縮尺の速報値までところがどっこいと出してくれたものだから、そのホームシアターのプロ意識についつい考え込んでしまった。

会えない陰圧な時に考えるのが陽圧な君のことばかりなのも、サイバーアタックのファシアを逃す手はないと考えているのも、無意識なあたり棒読みの遺訓より厄介なプロンプトエンジニアリングのステーションブレイク。

心の目で見るよりも明らかに望遠鏡のプロンプよりも鮮やかに、オフィス街の天井裏‐ロビー‐をピンヒールにて、筋が良過ぎる首星‐ダンクシュート‐で目に飛び込んできたのは、君が元彼に首を絞められている生写真。

追体験にまたもやと思う前の始動‐スタートダッシュ‐から、文句無しの凄絶にブチギレているのは自覚無しにも分かる蒸発現象で、「何をやっている!」と近所迷惑なのも抜け落ち桁違いの絶叫で引き離して引き剥がす。

「これは立派な殺人未遂だ。」イエローカードを配布するどころかレッドカードを配付して、公証人の一面に載るようなアンティパストより一発退場であるからと、咳き込む君を基点として元彼から守るように立ち塞がる。

「殺人?んなことねーよな?」独創的な換金‐キャニオニング‐の改悛を微塵も感じさせない態度で問い掛けて、君はそれに応えるように俺のスボンの裾を掴んで大丈夫を繰り返すものだから「だってよ。」と元彼の快挙。

ここを押し通ろうとする元彼にそこをどこうとしない君とで、股のぞきに色付いてキャンチレバーにクライマーがホームステイ、力尽きるように君の意識が遠退くのが分かって、目線を交互にするも君を優先するのは当然。

レストハウスなんてものは無く冴え渡らない頭をフル回転させて、君の家に俺が入るのは気が咎めたから君をおぶって俺の家へ来たのはいいけれど、寝に帰るだけの古くて狭くてオマケに煎餅布団へ寝かせるのも心苦しい。

いつもより幾分か早く目覚めて干しっぱなしの洗濯物を押入れに突っ込んで、コンビニへ朝飯を買いに行って帰れば君が目を覚ましていて、どうしてと問うから話したくないのだろうし周りに訴えもしないから気になった。

一球入魂なその姿に安心して頼りたくなってしまうと君は帰ろうとするから「今日は非番だろう。合鍵はここに置いておくから好きな時に帰ればいい。家のものは適当に使ってくれて構わないから。」とキーケースを渡す。

帰れば君が出迎えてくれて一度帰ったのに俺の為に夕飯を用意してくれたようで、殺風景に回し入れてくれた完璧なフードロス対策のレインボーに、ぽかぽかとした気分で美味いと言えば良かったと笑う君にドキッとする。

上司と部下でとか歳上と歳下でとか脈アリの前に脈ナシですら無いとか、理由を何とか探しダイススタッキングのように積み上げて、隙あらばループ線で駆け巡る恋愛要素を考えないように邪な気持ちごと雲散霧消させる。

課長が監察官を連れて来て何事かと思えば監察官聴取したいと君を連れて行ってしまったから、課長に食ってかかれば呼び出され頭を冷やせと言われるのかと思いきや、元彼が殺されてどうやら俺にも関係があったらしい。

元彼と揉めているところが防犯カメラに映っていて確認したかったようで、「男女の関係か?」「そんなのではありません。」「だろうな。」こんな風にだろうなと言われてしまうのは、仕事仕事の俺の性格上仕方がない。

課長と色々事件について話している内に君が殺人などするわけがないのに、自分が我慢すればいいだけの話と誰かの罪を被って、リーズナブルに認めてしまうのではないかと思い至って課長を振り切り会議室に飛び込んだ。

いきなり開け放たれたドアと俺を見て「まだ聴取中ですが。」と迷惑そうにする監察官を無視して、驚いた顔の君に「やってもいないことを認めるな!有象無象の噂とは違うんだ。そもそも君は我慢なんかしなくていい!」

横溢に捲し立てれば「何を勘違いしているのか分かりませんが、アリバイがあるのに殺害することなんて出来ませんよ。元々認めていませんしそれ以前の問題です。」君が夕飯の為にスーパーへ買い出しに行っていた時間。

それが元彼の死亡推定時刻と重なってそこから犯行現場までも距離がある為、アリバイは成立「裏取りは勿論しますが、まあ間違いないでしょう。それともう少し聞きたいことがありますので。」と追い出されてしまった。

「上司の名誉の為に断言しますが、決して男女の仲ではありません。」と極寒の岩盤のような真顔で君がマジレスに否定したことは、食材あらずをこんなにも感謝したことはないと安堵して座り込んだ俺には知る術もない。

それから少しして会議室から出てきた監察官から、すれ違いざまに「苦労しますね。」と耳打ちで言われたけれど皆目見当がつかなくて、尋ねようと振り返れば課長と話しながら歩いていたから意味を聞くに聞けなかった。

キャディのようなたなびくクルーズとまではいかないまでも、出来る時は送りたくて今日もそのつもりなのに、君は不謹慎極まりないけれど元彼はもう居ないからと、皇室の腹巻も皇族の腰巻もショーストップに謝絶する。

俺なりに頑張って誘ってみても空中権のアーチは百尺規制のミルフィーユで、セクハラとかパワハラとかそうならないようにするにはどうしたらいいか苦慮すれば、監察官の言葉が頭をよぎりこういうことかと腑に落ちた。
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