身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇

「真白様。清文様からのご命令の十二単でございます」

真白の部屋を訪れたのは、清蘭の女房だった藤だった。

藤の後ろには2人の女房がおり、色とりどりの十二単を持っている。

「十二単ですか……?」

藤は驚いている真白に言った。

「あ、あの私は……」

――十二単なんて着たくない。

「清文様からのご命令でございます」

見れば見るほど清蘭にそっくりな真白。

――清文様が気にかけるのも無理はないわ。清蘭様が戻ってきたような感覚に見舞われてしまう。

「私に持って来たら、清蘭様が困るのではないですか?」

真白は清蘭が亡くなっている事を知らなかった。

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