「お隣さんで幼馴染は恋の対象になりえますか?」
私…嫌いになれない
Q:すっぴんと化粧顔、どちらが気に入っていますか?

「断然化粧顔♪」

美春と知美のお陰で少しだけ自信が付いた気がした。子供っぽいなりにもやり方はあるんだ…って、教えてもらえてからは服も気を使うようになった。
二人と一緒に出掛けてナンパされたりもするようになったし、つい最近は合コンデビューもした。美春の彼、三年の浅野先輩の紹介だったから、安心して合コンデビュー出来たんだけど。そこで会った松岡先輩とアドレスを交換して、今度は二人で会わないかって誘ってもらえて…。


「ほのちゃん、統一郎君にこれ届けて?」

合コンから帰りると、お母さんにタッパーを無理矢理持たされた。煮物のお裾分け…統一郎のおじさまとおばさまは知り合いの不幸で二日ほど家を空けるから、食事の世話を頼まれたらしくて。

統一郎の家の前に立つのは本当に一年以上ぶり…緊張しながらインターホンを押す。
変わった私に…何かリアクションあるかな?

「……お前、何しにきたんだ」
「ぁ…お母さんが…」
「ああ…それか。礼言っといてくれ」

差し出したタッパーを取り上げながらも、統一郎は玄関から不機嫌そうに私を見下ろしてる。それだけ言って背を向けられて、私は思わず追い縋るように声を掛けた。

「統一郎っ…」
「ああ…似合わねぇ事するもんだな」
「ぇ…?」
「ガキが化粧で浮かれやがって…」
「っ…」

そんな風に統一郎から直接言われたのは初めてで…悲しくて…そのまま背を向けて走って部屋まで帰ってきた。なんのリアクションもなしに、しかも似合わないとかガキとか浮かれてるとか…。

「ヒドいよ…統一郎…」

ホントに嫌われたんだって理解出来た。もう統一郎には幼馴染だった過去があるだけなんだって。私ばっかりがあの時の事を引き擦ってる。私だけ…私だけが。



「おい」

声を掛けられて振り返ると、統一郎がいた。

「岸田先輩だ!」
「や~超カッコイイっ」
「…ぁ」

見下ろされて怖くて見上げられない。

「ほのか」
「っ」
「うまかった。今日も頼む」

紙袋を押し付けられて、追い抜きざまに頭をくしゃっとされた。周りの女子からは悲鳴みたいに声が上がる。
何?何で?昨日はあんなにヒドい事言ったくせにっ…。わかんない…全然意味わかんないよ!


帰りには美春と知美が買い物に付き合ってくれて…ぽつぽつと話をした。昨日あった事とか二年前の事とか…。

「ソレ、脈あるって事じゃない?」
「急に可愛くなったから、びっくりしたんだってば!」
「…そんなわけないよ。統…岸田先輩はいつも違う子ばっかり…」
「ヤキモチかも」
「絶対ない…昨日すごく怖かったもん」

慰めようとしてくれる二人に申し訳ない気持ちになった。

「そう言えば松岡先輩どうなの?」
「ほのかの事かなり狙ってたよね?」
「メアドは交換したよ、毎日一回は松岡先輩からメールあるし」

松岡先輩はマメな感じじゃなくて、不定期に思い出したらメールくれる感じで。その度に夜会おうって言われるけど、さすがに遅くはなれないって断ると、何か理由付けて親に嘘つけばいい…って。
統一郎はそんな事言わなかった。ちゃんと時間には帰してくれるし、統一郎が私に合わせてくれたから。
松岡先輩はカッコイイのかもしれないけど、統一郎と比べちゃうとやっぱり見劣りする感じ?もう外見とか適当にとかで付き合いたくないから、慎重に…じゃないけどホントに好きな人と付き合いたい。

さっきもメールがあったけど、美春たちと約束してたからって断ったらレスがなくなった。断ってばっかりったから怒っちゃったかな?メールではちゃんと謝ったし…大丈夫だよね。


美春たちと別れて帰って来たら、玄関でお母さんに会った。

「統一郎君、彼女が来てたわよ?高校生に見えない綺麗な子だったわ~」
「…あ…そ」
「ちょうど帰ってきたところみたいでね?」

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