上司のヒミツと私のウソ
「打ち合わせのあとで、谷部長から聞くまで知らんかった。すんません」

 首をすくめて、ぺこりとお辞儀する。

「い、いいえ」

「どうりでおかしいとおもってん。働く女性とか相模詩乃とか、あいつのカラーやないし」

 小さく舌打ちして、面白くなさそうな顔をした。

「……」

「ま、いろいろゆうたけど、あんまり気にせんといて」


 エレベーターが二階に着いた。営業部が入っているフロアだ。私が端っこに寄ると、本間課長はすれ違いざまひらひらと右手を振って、にかっと笑った。笑うとトレードマークの八重歯が見えて、急に幼い顔になる。


 要するに。


 昼間の彼の敵意むき出しの態度は、矢神ひとりに向けられたものだったらしい。そこまで仲が悪いなんて、矢神に恨みでもあるのだろうか。過去になにかされたとか?
< 133 / 663 >

この作品をシェア

pagetop