上司のヒミツと私のウソ
今年は雨の多い四月だったけれど、後半に入ってようやく気温が上がり、明るい空がもどってきた。歩道の脇の植え込みに、色とりどりのパンジーの花が咲き乱れている。
だけど、だれかに聞いてほしいなんて、私はいつからそんな甘えた考えを持つようになったんだろう。
これまでも悩むことは山ほどあったけど、ひとりで悩み、ひとりで解決策を探し、ひとりで決着をつけてきた。三十になって気弱になったとはおもいたくない。
店に近づくにつれ、気が滅入ってきた。やっぱりやめようかと足が止まりそうになる。けれど「あすなろ」の灯りが目に入ったとたん、吸い込まれるように格子の戸に向かっていた。格子戸から洩れる灯が、胸に沁みるほど温かく見えた。
そろそろと引き戸を開けると、店の中のざわめきと料理の匂いに包み込まれる。やっぱりこの店はほっとする。
「あらっ。いらっしゃい」
入り口近くのテーブルで注文を取っていた律子さんが、まっ先に私に気づいて声をかけてくれた。けれど、カウンターに座っていた男性がこちらを振り向いたとき、私は心臓が止まりそうになった。
だけど、だれかに聞いてほしいなんて、私はいつからそんな甘えた考えを持つようになったんだろう。
これまでも悩むことは山ほどあったけど、ひとりで悩み、ひとりで解決策を探し、ひとりで決着をつけてきた。三十になって気弱になったとはおもいたくない。
店に近づくにつれ、気が滅入ってきた。やっぱりやめようかと足が止まりそうになる。けれど「あすなろ」の灯りが目に入ったとたん、吸い込まれるように格子の戸に向かっていた。格子戸から洩れる灯が、胸に沁みるほど温かく見えた。
そろそろと引き戸を開けると、店の中のざわめきと料理の匂いに包み込まれる。やっぱりこの店はほっとする。
「あらっ。いらっしゃい」
入り口近くのテーブルで注文を取っていた律子さんが、まっ先に私に気づいて声をかけてくれた。けれど、カウンターに座っていた男性がこちらを振り向いたとき、私は心臓が止まりそうになった。