上司のヒミツと私のウソ
翌日、彼は約束どおり昼過ぎに私の住むアパートまで迎えにきてくれた。それから映画を見に行き、夜は予約していたレストランでゆっくりと時間をとって食事を楽しんだ。
彼はいつにもまして言葉少なで、なにか考え込んでいるようにも見えた。
デザートに出されたとろけるようなブランマンジェを食べ終えたあと、彼が「結婚してくれませんか」といった。
ほんのすこし会話が途切れた瞬間、自然にその台詞がこぼれでたかのような、スマートな告白だった。
予想外の展開に驚いて言葉を詰まらせていると、彼はふわりと笑って「返事は三日後でいいですから」といった。
三日後はバレンタインデーだった。
そして、私の三十歳の誕生日でもある。