上司のヒミツと私のウソ
「なによ」

「あんたのお気に入りの『一期一会』の企画も、あの二人が組んで成功させたのよね」

 えっ、と私は声にならない声を発していた。


 『一期一会』は、私が企画の仕事にあこがれるきっかけになった製品だ。この企画があったから、私はこの会社に入社した。そして、企画部に来ることになった……。

「そうだったんだ」


 胸が高鳴る。体中に熱いものがかけめぐる。なにかが起こりそうな予感がする。私が待ち望んだ──ずっと前から欲しくて欲しくてしかたなかったなにかが、すぐそこまでやってきている。

「西森ってさあ」

 昂奮の熱でぼうっとした頭に、安田のクールな声が響いた。


「なんだかんだいって、矢神課長のことすごく好きだよね」


 その声が言葉の形を伴ってゆっくり脳に浸透していき、どういう意味かを悟ったとき、私は茫然と安田を見た。安田はそんな私を見てうれしそうに笑っている。
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