上司のヒミツと私のウソ
ひょっとして、待ち伏せされていたのだろうか。
でもなぜ私が?
第一、どうやって私の住んでいる所を突きとめたのだろう。まさか矢神がしゃべったとはおもえない。
「失礼ですけど」と、私はなるべく穏やかな口調でいった。
「私、あなたのことをなにも知らないんです」
彼は心外そうな顔をした。
私が矢神からなにも聞かされていないことを、予想していなかったような反応だ。けれど、すぐにその考えを打ち消したようだった。
「彼にとっては、そのほうが都合がよかったんでしょうね」
彼は皮肉な調子でそういうと、左手だけを使って自然な動作でジャケットの内ポケットから名刺入れを出し、一枚引き抜いて私に差し出した。
「矢神隼人(はやと)といいます。あなたの上司の双子の兄です」
受け取った名刺には、矢神病院経営管理部部長、と記されていた。
その肩書きを見た瞬間に、会社に向かう意志が消えた。
でもなぜ私が?
第一、どうやって私の住んでいる所を突きとめたのだろう。まさか矢神がしゃべったとはおもえない。
「失礼ですけど」と、私はなるべく穏やかな口調でいった。
「私、あなたのことをなにも知らないんです」
彼は心外そうな顔をした。
私が矢神からなにも聞かされていないことを、予想していなかったような反応だ。けれど、すぐにその考えを打ち消したようだった。
「彼にとっては、そのほうが都合がよかったんでしょうね」
彼は皮肉な調子でそういうと、左手だけを使って自然な動作でジャケットの内ポケットから名刺入れを出し、一枚引き抜いて私に差し出した。
「矢神隼人(はやと)といいます。あなたの上司の双子の兄です」
受け取った名刺には、矢神病院経営管理部部長、と記されていた。
その肩書きを見た瞬間に、会社に向かう意志が消えた。