上司のヒミツと私のウソ
 これまでも話に加わろうとしたことは何度もあるけれど、そのたびにはねつけられた。「なにもわからないくせに余計な口出しをするな」と。

 エーデルワイスはあくまでも二人の店で、私の店ではなかった。


「あのひとたちは、一生ああなのよ。きっと変わらないとおもう」


 店の収入がなくなれば、今後は国民年金から受けられるわずかな基礎年金だけで暮らしていかなくてはならない。母はなによりそのことを心配していた。

 そして、私からの仕送りが期待できるのかどうかを探りたかったようだ。私を呼んだのは、ただそれだけの理由からだった。


「そんなことないわ」

 ミサコちゃんは、子供のころと同じように私を慰める。


「エーデルワイスがなくなれば環境が変わる。暮らし方も、華に対する見方も変わるわよ。一生変わらないひとなんて、いないとおもうな」

「そうかな」


 もうずっとまえにあきらめていた。

 でも、いつも心のどこかで求めている。

 いつか、彼らが私に気づいてくれて、私の声を聞こうとしてくれる日がくることを。
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